介護問題、想像と現実との間に「大きな乖離」
その数日後、佐藤さんは泣きじゃくる母親をタクシーに乗せ、施設へと送った。
「別に、普通に過ごしているみたいですよ。面会に行ったら、恥ずかしそうに〈食事がおいしい〉といっていたので、まあ、大丈夫だと思います」
佐藤さんは3週間に一度、どんなに忙しくても月に一度は面会に行くようにしているという。
「妹と叔父叔母ですか? 入所当初は数日おきに行っては泣いていたみたいですけれど、最近はまったく足を運んでいないらしいです。それ以上のことはわかりません」
朝日生命『自分の老後・介護についての意識調査』によると、「将来介護が必要な状態になると思うか」の問いに「思う」「少し思う」と回答した人は、合計で約7割。
そして、「介護されるなら、誰にしてもらいたいか」の問いには、「その他の第3者」と回答した人が37.4%で最多。さらに「介護生活に望ましいカタチ」を聞いたところ、「介護施設に入居する」が56.7%でトップとなっている。
そして「介護が必要になったときに不安に思うことは」の問いの最多の回答は「介護費用をまかなうための資金が不足すること 」が62.2%。「家族・親族に肉体的・精神的な負担をかけること」55.1%、「公的介護保険の内容だけでは支援として不十分なこと」49.1%、「家族・親族に経済的な負担をかけること」 45.8%、「介護してくれる人が身近にいないこと」45.2%、「介護がいつまで続くかわからないこと」44.9%となっている。
懸念事項は主に「お金」と「介護者への負担」ということか。
しかし、実際に介護される当事者になってみれば、佐藤さんや佐藤さんの母親のように、また違った考えや感じ方になるのかもしれない。
介護問題は、想像と現実との間に、大きな乖離があるようだ。
[参照]
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