犯罪者に「忘れられる権利」はあるか
2015年12月22日のさいたま地裁判決というものがあります。2011年に児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕され、罰金刑が確定した男性が、「当時の記事をグーグルで検索すると、自らの氏名や住所などの属性が表示されてしまうのを、削除させてほしい」という仮処分命令を申し立てたのです。
さいたま地裁は「ある程度の期間が経過した場合、過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」という趣旨の決定をしました。「忘れられる権利」が初めて正面から認められた決定でした。
グーグル社はこれに抗告します。すると、次の東京高裁は「法律で定められたものではなく、要件や効果が明白ではない」として、男性側の削除の申し立てを退けました。
さらに最高裁は2017年1月31日、「児童買春は社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって禁止されている」などとして男性の訴えを退け、裁判は終わりました。高裁判決では「削除することが、表現の自由と知る権利を侵害する」とし、「男性の買春行為は社会的関心が高く、公共の利害に関わる」と判示しました。
つまり、グーグルで犯罪履歴を検索し、その人が過去にどのような罪を犯したのか知る権利だってあるだろうというわけです。最高裁は「忘れられる権利」については踏み込まずに男性の主張を退けた一方で、「知る権利や公共の福祉、表現の自由VSプライバシー権、忘れられる権利」をどのように考えればよいかを判示しました。
ちょっと長くなりますが紹介すると、
としました。そのうえで、公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者(本件ではグーグル)に対し、当該URL情報等を検索結果から削除することを求めることができる、と判断したのです。
あまりに微罪であるのに記事を検索した結果がいつまでも残っているという場合は、記事の削除を求めることができる、とも解釈できます。つまりは、ケースによっては削除が認められる可能性も今後はありうるということです。
一連の判決はメディアに大きな影響を与えたように思います。これ以降、各新聞社、通信社とも、満期勾留の結果、容疑者が不起訴処分となった場合や処分保留で釈放された場合などは、過去記事を削除するようになっているようです。
住所をぼかす記事が増えたのも、先ほどの不動産価値への影響に加えて、こうした判決によるところもあると考えて不思議ではありません。
三枝 玄太郎
※本記事は『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
注目のセミナー情報
【税金】11月27日(水)開催
~来年の手取り収入を増やす方法~
「富裕層を熟知した税理士」が考案する
2025年に向けて今やるべき『節税』×『資産形成』
【海外不動産】11月27日(水)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!
【事業投資】11月28日(木)開催
故障・老朽化・発電効率低下…放置している太陽光発電所をどうする!?
オムロンの手厚いサポート&最新機種の導入《投資利回り10%》継続を実現!
最後まで取りつくす《残FIT期間》収益最大化計画
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】