(写真はイメージです/PIXTA)

世界の株式市場は、好調な半導体関連銘柄により米国、台湾などが上昇する一方で、議会選挙で極右勢力が台頭したフランスをはじめ欧州は政治的不透明感により下落。世界経済は安定に向かうとみられるが、途上国の債務返済や貿易機会の制限のリスクに注意が必要だという。ニッセイ基礎研究所の原田哲志氏が解説する。

3―世界の主要企業の株価動向

世界の主要な企業の株価は幅広く上昇した (図表7)。時価総額上位30位の企業では、ブロードコム(+14.0%)、オラクル(+13.4%)、イーライリリー(+12.1%)のリターンが高かった。

 

一方で、トヨタ自動車(▲6.9%)、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(▲5.7%)、サウジ・アラビアン・オイル(▲4.5%) のリターンが低かった。ブロードコムは2─4月決算で市場予想を上回る利益と売上高を公表したことが好感された。また、同社はエヌビディアに続き1株を10株に分割することを公表した。トヨタ自動車は量産に必要な「型式指定」の認証不正が発覚したことから株価は下落した。

 

 

4―今後の見通しと注目されるテーマ

グローバル株式市場は上昇が続いた。6月11日、世界銀行は「世界経済見通し」を公表した*3。この中で、「世界経済の成長率は2024年に2.6%で前年から横ばいとなり、2025~26年には平均2.7%に上昇すると予測される」としている。2024年の見通しは5月に公表された国連、OECDの予測でも上方修正されている。しかし、成長率の予測値は新型コロナ前の10年間の平均3.1%を下回っている。これは多くの国で新型コロナ前よりも経済の成長が緩やかになることを示唆している。

 

パンデミックや紛争、インフレ、金融引き締めによる混乱から脱却し世界経済は安定に向かうとみられる。しかし、世界銀行は同時に途上国の債務返済、貿易機会の制限、気候変動への対応コストといったリスクを指摘している。安定化が期待されるがリスク要因も存在する中で、グローバル株式市場の動向に引き続き注視していきたい。

 

*3:世界銀行、「世界の成長率、3年ぶりに安定へ」、2024年6月11日

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2024年7月8日に公開したレポートを転載したものです。

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