キャリアとノンキャリアに確執はあるのか
「キャリア組のあいつらがいるせいで、俺たちがやりたいように捜査できないんだ」ドラマや映画ではよくこんな風にキャリアとノンキャリアを対立させますが、これも私はどうかと思います。
そもそもキャリアは捜査員というよりは行政官です。立法作業をしたり、通達を出したり、事件や統計を分析したりと、警察組織そのものを指揮、監督することが求められています。しかも難しい事件はあまり担当させてもらえません。ノンキャリアのように捜査の現場周辺を歩き回ったり、白バイに乗ったりはしないわけです。
逆に、「この若造が」というノリで、ノンキャリアがキャリアにぞんざいな口を利いたり、からかったりすることは結構あるようです。とくに警視庁捜査一課などは鼻っ柱の強い職人気質の刑事の集まりですから、トンチンカンな指示を出す管理官などは、「あんたはダメだ」と、露骨に酒席でやられるようです。
ただ、これはほどほどにしておかないとしっぺ返しを食らうことになります。若くしてキャリアで警視庁の捜査一課管理官になった人は、数年後、遅くとも10年ほどすれば、またさらに上の階級として戻ってくる可能性がかなり高いのです。警視庁の部長、参事官、課長、署長、管理官を務めるというのは、キャリアの中でもエリート。若いころに警視庁の署長、本庁の課長を務めるならなおさらです。
警察庁長官のときに銃撃されて重体となった国松孝次さんは、若いころに本富士署の署長や警視庁広報課長を務めています。私が警視庁担当記者だったころ、捜査二課長に就任した金髙雅仁さんは、その後、警視庁刑事部長を務め、最終的に警察庁長官というキャリア組トップの出世を遂げました。オウム真理教事件のときの警視総監、井上幸彦さんも警視庁警備一課長、人事一課長、警備部長などを歴任しています。
スリーアミーゴスの室井管理官へのおべんちゃらは、先々を見越してのものだったのかもしれません。
三枝 玄太郎
※本記事は『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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