本庁と警察署をぐるぐる回る
ノンキャリアは巡査→巡査部長→警部補→警部→警視と昇進していきます。警視庁の場合ですと、警部に昇任した段階でのポストは所轄警察署の刑事課長代理あたりが相場です。そこで3年ほど勤務したあと、本庁(東京都なら警視庁、県警なら県警本部)の刑事部捜査一課などの係長になります。
そこでまた3年ほど勤めると、再び所轄警察署に、今度は課長として出ます。その後も警察署と本庁を行ったり来たりが繰り返されます。本庁に戻って管理官↓警察署副署長↓本庁に戻って理事官……。このあたりで警視に昇任しており、大過なく過ごしていればどこかの警察署署長になります。
ノンキャリアの世界では本庁・本部の花形部署に通算何年いたかがステータスです。検事なら特捜部に何年いたとか、法務省で長く務めた(「赤レンガ組」といいます)ことを自慢するのに似ています。
一方、キャリア組は巡査、巡査部長をすっ飛ばして警部補からスタートします。2年後に警部になり、5年目くらいには警視になっています。ノンキャリアで27〜28歳というとまだ巡査部長がほとんどですから、出世のスピードがまるで違います。
『踊る〜』では神田署長(ノンキャリア)は湾岸警察署の署長で、階級は警視です。室井管理官(キャリア)は警視庁捜査一課の管理官で、階級はやはり警視です。同じなわけです。しかし、職責でいえば署長のほうが管理官より上です。これが私の感じた違和感の理由です。
ちなみに室井管理官は東北大学出身で、東京大学卒が幅を利かせる警察庁ではやや傍流というスタンスで描かれているようです。これはその通りだと思います。
警察庁でトップまで行く人の出身大学はキャリアでも東大がほとんどで、たまに京大がいる程度。早稲田や慶応などの私大組、九州大、大阪大、名古屋大、東北大などの旧帝大は警察庁長官、警視総監にはめったになれません。のちに政治家となり、法務大臣まで務めた秦野章という人がいましたが、この方は日大卒で、私大出身者では初の警視総監となりました。
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