父「同居してくれた長男に財産の大半を渡したい」→二男「おれには遺留分がある!」…相続で子どもたちを揉めさせない遺言書の中身【弁護士が解説】

父「同居してくれた長男に財産の大半を渡したい」→二男「おれには遺留分がある!」…相続で子どもたちを揉めさせない遺言書の中身【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

遺言書を作成する際には、遺留分に注意が必要です。もし、相続人の遺留分を侵害するような遺言書を作成した場合、遺言書と遺留分はどちらが優先されるのでしょうか? 本記事では、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が、遺言書と遺留分の関係や遺留分トラブルを防ぐための事前対策について解説します。

生命保険を活用する

生命保険は、遺留分対策としてしばしば用いられています。その理由は、主に次のとおりです。

 

■遺留分侵害額請求に備えた資金準備ができるため

一部の相続人の遺留分を侵害する内容の遺言書を作る場合には、将来の遺留分侵害額請求に備えた資金繰り対策が必要となることは、先ほど解説したとおりです。この資金繰り対策として、生命保険がしばしば活用されます。なぜなら、被相続人を被保険者とした生命保険金は、被相続人の死亡により受取人に対して直接支払われるためです。

 

遺留分侵害額請求をされる可能性のある人を生命保険金の受取人に指定しておくことによって、遺留分侵害額請求がされた場合には、受け取った生命保険金を原資として請求された遺留分侵害額を支払うことが可能となります。

 

■遺留分算定の基礎となる金額を減らす効果があるため

遺留分算定の基礎となる財産は、次のとおりです。

 

1.遺言書の対象となった財産など、被相続人が相続開始のときにおいて有していた財産
2.相続開始前の1年間に、被相続人が相続人ではない人に対して贈与した財産
3.相続開始前の10年間に、被相続人が相続人に対して贈与した財産
4.2や3以前であっても、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした財産

 

実は、このなかに生命保険金は含まれていません。生命保険金は受取人の固有財産であり、遺産とは異なる性質を持っているためです。

 

そのため、たとえば相続開始時に被相続人が有していた2,000万円の預貯金は遺留分算定の基礎に含まれる一方で、この2,000万円を被相続人が生前に保険料として払い込み、被相続人の死亡によって支払われた2,000万円の生命保険金は、遺留分算定の基礎に含まれません。この性質を利用して、遺留分の金額を下げるために生命保険がしばしば使われています。

 

ただし、遺産の大半を生命保険とするなど、遺産総額などから見て看過できないほどの不公平が生じている場合には、例外的に生命保険が遺留分算定の基礎に含まれることとされています。

 

「いくら以上の生命保険金であれば遺留分算定の基礎に含まれる」というような明確な線引きはありませんので、あらかじめ弁護士へ相談のうえ、個別の状況に応じて慎重に検討する必要があるでしょう。

 

専門家のサポートを受けて遺言書を作成する

問題のない遺言書を作成することは、実はそれほど容易なことではありません。遺言書の作成は、遺留分などについて十分考慮をしたうえで行うべきものです。検討不足のまま安易な内容で遺言書を作成してしまえば、将来の争いの種となってしまう可能性があるでしょう。

 

そのため、遺言書を作成する際には、弁護士など専門家のサポートを受けることをおすすめします。専門家のサポートを受けることで、自分では気づきにくいリスクや検討が漏れている点などに気がついてもらいやすくなり、将来のトラブルリスクを下げることが可能となります。

遺留分について理解したうえで遺言書を作成する

遺留分を侵害したからといって、遺言書が無効になるわけではありません。しかし、遺留分を侵害した遺言書を作成すれば、将来遺留分侵害額請求がされ、トラブルとなる可能性があります。

 

遺言書作成時には、遺留分について理解したうえで、可能な対策を講じておくべきでしょう。

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所

 

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