父「同居してくれた長男に財産の大半を渡したい」→二男「おれには遺留分がある!」…相続で子どもたちを揉めさせない遺言書の中身【弁護士が解説】

父「同居してくれた長男に財産の大半を渡したい」→二男「おれには遺留分がある!」…相続で子どもたちを揉めさせない遺言書の中身【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

遺言書を作成する際には、遺留分に注意が必要です。もし、相続人の遺留分を侵害するような遺言書を作成した場合、遺言書と遺留分はどちらが優先されるのでしょうか? 本記事では、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が、遺言書と遺留分の関係や遺留分トラブルを防ぐための事前対策について解説します。

遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額請求時の支払原資を確保する

検討をした結果、遺留分を侵害する内容の遺言書を作成する場合もあることでしょう。ただし、この場合には、仮に遺留分侵害額請求がされた場合に備えた資金繰りの対策をセットで行っておく必要があります。この対策をしておかなければ、請求された遺留分相当の金銭を支払えず、遺産を多く取得した人を困った立場に置いてしまう可能性が高いためです。

 

支払原資の確保としては、たとえば資産の一部を生前に売却して現金化しておくことなどのほか、後ほど解説をする生命保険の活用などが検討できます。いずれにしても、「遺留分請求なんてされないだろう」などと考えて遺留分を侵害する内容の遺言書を安易に残すことは、最も避けるべきでしょう。

 

あらかじめ意向を伝えておく

冒頭で触れたように、遺言書を作成するにあたって、推定相続人に同意を得る必要などはありません。しかし、後のトラブルを避けるためには、遺言書を作成する段階で、遺言書の内容やそのような遺言書を遺す理由などを推定相続人に伝えて理解を得ておくこともひとつでしょう。

 

遺留分を侵害する内容の遺言書を作ることには、なんらかの理由があることかと思います。たとえば、「二男には海外留学や自宅の建築などで十分なお金をかけてきたから、相続では長男に多く残したい」といったことや、「同居をしてくれた長男に財産の大半を占める自宅を渡してあげたい」といったこと、「会社を継ぐ長男に自社株を集約して承継させたい」といったことなどです。

 

こうした事情をあらかじめ本人から話しておくことによって、取り分の少ない推定相続人の理解が得られ、将来の遺留分侵害額請求の抑止力となる効果が期待できます。

 

遺言書の付言事項を活用する

遺言書には、「付言事項」を記載することができます。付言事項とは、遺言書についての補足事項のようなものです。一般的には、その遺言書を遺した理由や、「これからも家族仲良く暮らしてください」など将来遺言書を見ることとなる人へのメッセージなどを記載することが多いでしょう。

 

付言事項に書いた内容には、法的拘束力はありません。しかし、ここに遺留分を侵害した遺言書を作成せざるを得なかった理由や、遺留分侵害額請求をしないでほしい旨などを書いておくことで、遺留分侵害額請求の抑止力となる効果が期待できます。

 

生前の遺留分放棄を活用する

被相続人の生前に、遺留分放棄をする制度が存在します。ただし、生前に遺留分放棄をするためには、家庭裁判所の許可が必要です。許可を得るためには、原則として次の要件をすべて満たさなければなりません。

 

・遺留分放棄をしようとしている本人の自由意思によること
・遺留分放棄に必要性や合理性が認められること
・遺留分権利者が充分な代償を受け取っていること

 

そのため、被相続人やほかの推定相続人などの要請で無理に遺留分放棄させることなどはできません。また、いくら遺留分放棄をする人が協力的であったとしても、十分な代償がないと判断されれば許可されない可能性が高いでしょう。

 

このように、生前に遺留分放棄をしてもらうハードルは、決して低いものではありません。しかし、仮にこれらの要件をクリアできそうな場合には、ぜひ活用したい制度のひとつです。遺留分の権利を持つ推定相続人に遺留分放棄をしておいてもらえば、遺留分侵害額請求の心配をすることなく遺言書を作成することが可能となります。

 

なお、被相続人が亡くなってからの遺留分放棄には特に方式などの制限はなく、遺留分侵害額請求はしない旨の意思表示を、遺産を多く受け取った相手に対してするのみで構いません。

 

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