厳しいノルマに人格否定、逃れた先でもまた…
40代の男性は深くうなだれる。
「ブラック企業をどうにか退職したのですが、生活に行き詰りまして。給料を妥協して就職した先は、もっとひどいブラック企業でした…」
男性は独身で、横浜郊外のアパートにひとり暮らし。郷里の実家では、年取った両親と兄家族が同居している。
「私は営業職です。ノルマのきつい仕事ですが、転職した直後は、まだ従業員にも一体感があり、やりやすかった記憶があるのですが…」
男性が入社して3ヵ月、部署をまとめていた上司が退職し、別の上司が配属されてきた。新しい上司は非常に威圧的で、成績が出せないスタッフに対し、すぐに大声をあげて威嚇した。それだけではなく、数字が取れない部下を執拗に追い込むようなこともした。
「数字が出せないスタッフには、〈振り返りレポート〉といって、なぜ数字が取れないのか、外に出ている間、どんなことにどれほど時間をかけているのか、それに対して自分でどう思っているのか、すべて事細かく記入・報告させるのです」
「成績が上がらない私も、しょっちゅう記入を求められました」
しかしあるとき、男性は多忙のため、いつもより記述が粗いものを提出してしまった。すると上司は、全員の前でそれを読み上げ、人格否定する激しい言葉を並べ続けた。
「周囲のスタッフは、矛先が自分に向かないよう、どんな罵詈雑言が響いても黙っていました」
「これまで3回転職しています。いまの職場の前も営業でしたが、成績が出せないと、罵詈雑言を浴びるのは同じ。ですが〈振り返り〉がなかっただけ、前職の方がマシだったかも…」
ブラック企業に新卒で入社した就職氷河期世代のなかには、激しいパワハラ被害を経験している人もいるようだ。ある金融会社では、下記のような行為がまかり通っていた。
●朝礼で伝えた金額が達成できていないと、夕礼で怒鳴られる、ときには頭等を叩かれる
●電話営業のノルマがこなせないと、傘や灰皿(アルミ製のもの)が投げつけられる
●成績があげられない状況が続くと、全員の前で「私はダメ人間です」といわされ、土下座を強要される
●顧客と握って会社を欺き、契約ノルマが達成できたかのように見せかける従業員もいる
「もう、仕事をやめようと思います…」
だが、懸念事項がある。やはり「給与」だ。
転職により給与が減少した人、3割
厚生労働省『令和5年上半期雇用動向調査』によると、転職によって給与が増加したのは38.6%。1割以上の増加は27.2%だった。一方で転職により給与が減少したのは33.2%で、1割以上の減少は25.8%だった。
年齢別では、転職による給与アップは年齢が上がるにつれて減少傾向にあることがわかる。一方、「転職による給与減」の割合は30代後半をピークにした減少するも、定年間近の50代後半では再び上昇する。
◆年齢別「転職による給与増減」の割合
20代前半:54.0% / 19.3%
20代後半:47.7% / 22.3%
30代前半:47.4% / 32.6%
30代後半:40.8% / 31.4%
40代前半:43.9% / 26.1%
40代後半:38.0% / 28.1%
50代前半:25.3% / 38.1%
50代後半:30.2% / 35.8%
※数字の左が給与増・右が給与減
男性は悩んだ結果、退職して、まずは一度郷里に帰ることにしたという。
「両親と兄が〈いいから一度帰って来い〉といってくれて…」
仕事は生活の糧だが、人生そのものを損なう結果になっては元も子もない。幸せの根本は、心身の健康があってこそ。まずは家族のもとで健康回復に努めるのも、状況によっては、最もメリットある選択肢となるのではないだろうか。
[参考資料]
株式会社ワークポート『パワハラ被害の実態についてのアンケート調査』
税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
カメハメハ倶楽部セミナー・イベント
【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは
【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討
【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成
【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】