普通に生きたいだけなのに…絶望のAさんに残された選択肢
「もう、なにも考えられません。普通に生きたいだけなのに、それがなんでこんなにも難しいんでしょうか……」
筆者のもとを訪れたAさんは、なかば自暴自棄になっている様子です。
一連の経緯について聞いた筆者は、Aさんの今後についてシミュレーションのうえ、次の対策を伝えました。
1.母親の口座から当面必要なお金を出金&可能なら代理人カードを作成する
銀行に母親が認知症になったことが伝われば、原則母親名義の口座は凍結され、お金を引き出せなくなります。
ただし、口座凍結後も親の預金を引き出す方法が2つあります。それが「成年後見人制度」と「代理人カード」の作成です。
「成年後見人制度」とは、認知症などによって判断能力を失った人の財産保護のために「後見人」と呼ばれるサポーターを選定し、その後見人が財産管理や契約締結などを代行してくれる制度です。
後見人をつけることで母親のお金を出金できるようになります。ただしこの場合、後見人に支払うランニングコストが発生します。また、後見人はあくまでも母親のために財産管理を行うため、Aさんは以前と比べて不自由に感じるでしょう。
他方、窓口で「代理人カード」を作成することにより、後見人をつけずともAさんが母親に変わって入出金できます。
2.母親の財産を確認する/3.生活費の確認をする
また、今後のことを考えると、精神疾患を患っているAさんが自身の体調の様子をみながら母親の面倒をみるというのは簡単なことではありません。したがって、母親を介護施設に入所させることも視野に入れる必要があります。
その際にあわてないためにも、Aさんはいまのうちに母親の財産を把握し、毎月の生活費にいくらかかっているか(どれくらい必要か)を確認しておくといいでしょう。
4.親族に協力を求める
幸い、母親には父親の遺産があり、FPからみても資産的には問題ないようです。しかし、今後さまざまな手続きをするにあたって、Aさんひとりでは心細いでしょう。したがって、親族に相談してみるよう伝えました。
長いあいだ母親と一緒に暮らしてきたAさんは「こうなったからには、自分がなんとかしなければ」という責任感が強く、それゆえに関係性の薄い親族に相談するという選択肢がなかったようです。ひとりで抱え込むのではなく、可能な範囲で周りの人を頼りましょう。
5.介護保険サービスを利用する
なにより伝えたいのが、決して無理はせずに「介護保険サービス」を活用しましょう、ということです。
自宅で過ごす場合は、訪問介護やデイサービスなどの通所介護がいいでしょう。また、自宅で過ごすことが難しくなった場合は、認知症の人に対応したグループホームなど、施設介護のサービスを受けましょう。
ここまで聞いて、Aさんは「なんとかなるかもしれないな」と少し希望を抱けたようです。
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