高度成長期はすごかったが、生活水準はいまの方がはるかに上
筆者は詳しくありませんが、企業経営の観点からすると、戦後に実力者たちが一斉に表舞台を去り、若い人々が伸び伸びと経営することができたという点も重要なのかもしれません。山火事のあとで焼け野原に若い芽が出て来たときに、太陽光を遮るものがなにもないのでスクスクと育った…というイメージでしょうか。
それと比べると、過去の成功体験を持った高齢者が実力を持ち続けているので、企業経営が旧態依然のままだ、ということなのかもしれません。パソコンが苦手な高齢者が経営幹部に多いと、業務のIT化が進みにくい、といったイメージですね。
しかし、「高度成長期はいまよりよかった」などといっているわけではありません。生活水準はいまのほうがはるかに豊かですから。
当時は、何ヵ月分もの月給を使って白黒テレビをようやく買った、自宅に電話線を引いてもらうのに順番待ちをした…という時代でしたが、いまではスマホ1台あれば、通話や写真撮影は当然、音楽を聴いたりテレビを見たり、果ては図書館の資料にまでアクセスできるのです。
景気変動が小さくなったワケ
筆者は景気の予想屋なので、景気についても記しておきますと、当時と比べて景気の変動が小さくなっています。ひとつには、財の需要は振れやすく、サービスの需要は振れにくい、ということがあります。財は在庫変動が大きいけれど、サービスには在庫変動がない、ということも重要でしょう。
もうひとつ重要なのは、少子高齢化です。高齢者の消費は安定しているので、高齢者向けの仕事をしている人の所得は安定していることから、彼らの消費も安定しているのです。極端な話、現役世代の全員が高齢者の介護をしている国では景気変動がありません。いまの日本は、少しずつそちらの方向に進んでいる、というわけですね。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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