2030年、日本の「認知症患者」は523万人へ。フランスは抗認知症薬が2018年から「保険適用外」に。令和の認知症との向き合い方【元参議院産業医が解説】

2030年、日本の「認知症患者」は523万人へ。フランスは抗認知症薬が2018年から「保険適用外」に。令和の認知症との向き合い方【元参議院産業医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

厚生労働省は2030年までに認知症患者は523万人になると推計しています。本記事では、参議院事務局産業医としての経験を持つ株式会社フェアワーク代表取締役会⻑・吉田健一医師が、産業医の目線から認知症との向き合い方について解説します。

認知症にならずに元気に稼ぐには〜生活習慣病予防の取り組みが認知症予防にもつながる

お伝えしたとおり、現状認知症を根本的に治療する薬はありません。これからも元気でいきいき働き続けるためには、まず「認知症にならない」ことが大事です。

 

では、「認知症にならない」ためにはどのような取り組みが有効なのでしょうか。たとえば、糖尿病と脳血管障害は、中年期(45~64歳)か高齢期(65歳以上)かにかかわらず認知症のリスクを高めるとされています。

 

一方で、高血圧や肥満、脂質異常症に関しては、中年期では認知症の危険性を高めることがわかっていますが、高齢期においてはっきりとしたことはわかっていません。

 

とはいえ、生活習慣病対策を念頭においた暮らし方が、そのまま認知症の予防にもつながるといえるでしょう。

認知症予防に効果的な3つのポイント

認知症予防にお勧めするのは、第一に禁煙です。禁煙によりリスクが高まる脳血管障害は、発症や再発を繰り返すうちに認知症になりやすくなることがわかっています。脳血管障害を発症した10人に1人は1年以内に認知症に移行します。過去に脳血管障害を発症したことのある人が再発すると、早晩10人に3人が認知症に移行する、といわれています。やはり、タバコは百害あって一利なし、なのです。

 

次に、定期的な運動です。運動習慣がある人は、認知症リスクを低減できます。運動をすることで、脳の血流量が増加し、神経細胞が増えると考えられています。

 

では定期的な運動とはどの程度かというと、週3回で計2時間以上の運動で良いのです。忙しいビジネスパーソンの場合、週3回で計2時間以上はハードルが高いかもしれませんが、スキマ時間などをやりくりして、運動習慣を身に着けたいものです。

 

第三は食事です。認知症予防につながる食材というのは科学的に証明されていませんが、生活習慣病予防を念頭に置いた食生活を送ることが近道でしょう。野菜や果物、魚などの抗酸化あるいは抗炎症作用をもつ食品や栄養素が、認知症発症予防に有効と考えられています。高血圧の方は認知症になりやすくなりますので、減塩を心がけましょう。

 

禁煙・運動・バランスのとれた食事。これは認知症に限らず健康生活習慣として推奨されているものです。元気に働き続け、社会参加をし続けるためにも、自分の健康に意識を向ける力=ヘルスリテラシーを高める取り組みを、読者の皆様には心がけていただきたいものです。

 

(参考:国立研究開発法人は国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」)

 

吉田 健一

産業医/精神科医

株式会社フェアワーク

代表取締役会⻑

 

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