2030年、日本の「認知症患者」は523万人へ。フランスは抗認知症薬が2018年から「保険適用外」に。令和の認知症との向き合い方【元参議院産業医が解説】

2030年、日本の「認知症患者」は523万人へ。フランスは抗認知症薬が2018年から「保険適用外」に。令和の認知症との向き合い方【元参議院産業医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

厚生労働省は2030年までに認知症患者は523万人になると推計しています。本記事では、参議院事務局産業医としての経験を持つ株式会社フェアワーク代表取締役会⻑・吉田健一医師が、産業医の目線から認知症との向き合い方について解説します。

根本的に進行を止める薬は現状、存在しない

長く健康に働き、社会参加し続けるためには、まず「認知症にならないこと」「もし認知症と判明した場合には、経過を緩やかにすること」を目指していくことになるでしょう。

 

日本国内では現在、抗認知症薬として4種類の薬剤が認可されており、いずれも保険対応になっています。残念ながら現在使用されている薬は認知症の進行防止薬であり、認知症の進行を根本的に止めることまではできず、記憶障害や行動障害を劇的に改善させるほどの効果もは期待できません。

 

一方、脳内に残存する神経細胞を活性化させ、記憶や思考・判断などの働きをある程度保つ可能性がありますので、日常生活に活気が出たり、イライラや不安を少なくすることによって、生活の質を上げる効果は期待できます。

 

冒頭ご紹介したように、認知症患者が推計523万人に達するということで、これらの薬を使う人も増えてくることでしょう。保険が効く薬ということは、保険財政の圧迫にもつながってしまいます。

フランスでは抗認知症薬は保険適用外に

実は、フランスでは2018年から抗認知症薬には公的保険が適用されなくなっています。理由は、現時点で完治が目指せるものでもないため、社会的な費用と便益を鑑みたときに「薬を使いたい人は自費で利用してもらい、保険財源は使えない」という整理がされています。

 

我が国は現在、認知症の治療薬に公的保険が使えますが、早晩、保険財政の圧迫要因になることは目に見えています。「認知症の薬は保険適用外」という諸外国の流れを受けて、いずれ日本もそうなっていくかもしれません。

 

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