事件や事故の報道でよく目にする「命に別条はない」と「意識はある」、「重傷」と「重体」…それぞれの違いとは?【元新聞記者が解説】

事件や事故の報道でよく目にする「命に別条はない」と「意識はある」、「重傷」と「重体」…それぞれの違いとは?【元新聞記者が解説】

ニュースの中で「命に別条はありません」、あるいは「意識はあります」と報じられることがあります。また、「重傷」と「重体」という表現も頻繁に目にするでしょう。これらは具体的にどのような状態を指しているのでしょうか。三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より、著者の三枝玄太郎氏がよく似ているようで同じではない「それぞれの違い」について詳しく解説します。

第一報は「意識あり」…助かると思われたが

いかりや長介さん率いるザ・ドリフターズのメンバーで、2022年に交通事故で亡くなった仲本工事(81=本名・仲本興喜=)さんも事故の第一報は「意識あり」でした。

 

「(10月)18日午前9時10分ごろ、横浜市西区浅間町5丁目の市道で、歩行中だったザ・ドリフターズのメンバー、仲本工事さんが、パート男性(73)運転のワゴン車にはねられた。仲本さんは救急搬送時、頭を打つなどして意識がもうろうとした状態で、病院で手術を受けたという」

 

これは『朝日新聞』の第一報ですが、記事には「命に別条はない」とは書いていません。意識も「もうろう」ですから、重傷より程度はひどいでしょうが、重体と記載するような、意識不明の状態ではなかったことがわかります。記事の見出しは「ドリフ仲本工事さん、車にはねられ重傷横浜の信号機のない交差点」でした。

 

私は、この記事を読んだとき「後遺症が残るかもしれないけれども、きっと助かるな」と思いました。決して軽いけがではありませんが、50代になってもなお、テレビ番組でバック宙を披露していた頑健な仲本さんですから、きっとまた元気な姿を見せてくれるだろう……。

 

ところが翌19日夜、仲本さんは急性硬膜下血腫で亡くなってしまいました。とくに頭部を打った場合は、意識があっても安心はできません。

 

警察庁は1946年以降、交通事故の被害に遭った人が24時間以内に死亡した場合に「死者」として集計していました。大ヒットした映画『踊る大捜査線』でも、北村総一朗さん演じる神田総一朗署長が、重篤な交通事故の被害者を「24時間生きていたことにしよう」と言い放つ場面があります。自分の警察署管内での交通事故死者を増やしたくないからです。

 

多くの国では交通事故発生から30日以内に死亡した人を死者にカウントしています。これでは国際比較ができないということから、1993年以降は24時間経過後30日以内に死亡した人も「30日死者」として、別個に統計を取っています。

 

2013年の統計によると、全国の交通事故死者(24時間以内)は4,373人、30日以内に亡くなった方は5,152人でした。ということは、24時間経過したときには生きていた方が、その後およそ1カ月以内に亡くなるケースが779人、実に約15%にも及ぶ計算になります。

 

その中には、24時間経過時には重体だった方だけではなく、重傷だった方も含まれていると思います。「命に別条がない」はずなのに、あとになって亡くなってしまったというケースは聞いたことがありませんが、重傷である場合は気を抜けない、ということです。

 

ちなみに重傷ではなく、まれに「重症」と報じられることがあります。食中毒などで搬送されたような場合が多いでしょうか。文字通り「傷」ではないので「重症」になります。火災に遭って煙を吸って運ばれた場合も、重症と発表されることがよくあります。やけどなどを負ってはいないが、一酸化炭素中毒を起こしているときに多いようです。

 

かつては「即死」と書かれた記事がよくあり、私も交通事故などの記事で何度も書きましたが、今は即死は極めてめずらしいそうです。なぜなら心肺停止状態でも病院に搬送し、医師が死亡を確認してからでないと、死亡と警察が認めないことが増えたからです。

 

三枝 玄太郎

 

※本記事は『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

 

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※本連載は、三枝玄太郎氏の著書『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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