●日経平均の上昇基調回復には企業業績、企業改革、賃金の3点にさらなる進展の材料が必要。
●4-6月期決算で業績予想の改善期待が高まり、企業改革ではより質の高い開示が増える見通し。
●実質賃金はまもなくプラス転換、日経平均は7-9月期中に上昇基調を回復し年末42,200円へ。
日経平均の上昇基調回復には企業業績、企業改革、賃金の3点にさらなる進展の材料が必要
2024年の日経平均株価は1-3月期に20.6%上昇し、3月22日には取引時間中に一時41,000円台をつけるなど、堅調に推移しました。しかしながら、4月に入るといったん調整色が強まり、日経平均は5月以降、おおむね37,600円から39,400円のレンジ内での推移が続き、4-6月期は6月25日まで3%の下落となっています。そこで今回は、日経平均が上昇基調を回復するための条件について考えます。
これまで、日本株の先行きを展望するにあたり、注目しておきたい3つのポイントとして、「企業業績」、「企業改革」、「賃金」を挙げてきました。これらは1-3月期にそろって改善傾向が確認されたため、日経平均は上昇、ただ4-6月期は目新しい動きがなかったため、上昇一服となったと考えています(図表1)。したがって、日経平均が上昇基調を回復するには、この3つのポイントについて、さらなる進展の材料が必要と考えます。
4-6月期決算で業績予想の改善期待が高まり、企業改革ではより質の高い開示が増える見通し
1つ目の企業業績について、企業自身による2024年度の業績予想は現在、総じてかなり控えめな内容となっています。そのため、業績が日本株の買い材料となるには、業績予想の上方修正(少なくとも、その期待)が必要です。そこで注目されるのは、7月下旬以降に本格化する3月期決算企業の4-6月期決算です(図表2)。足元の円安地合いもあり、まずまず良好な業績の走りが確認され、業績予想の上方修正期待が高まることも想定されます。
2つ目の企業改革について、企業は2023年3月31日に東京証券取引所(以下、東証)から、資本コストや株価を意識した経営を要請されて以降、積極的にその取り組みと開示を行っています。こうしたなか、東証は2024年2月1日、投資家が一定の評価をしている取り組みの事例を公表しており、企業がこの内容を踏まえ、投資家の視点から資本効率改善などに取り組めば、より質の高い開示が増えることが期待されます。
実質賃金はまもなくプラス転換、日経平均は7-9月期中に上昇基調を回復し年末42,200円へ
3つ目の賃金については、物価を考慮した実質賃金の動向が注目されます。直近4月の実質賃金は前年同月比1.2%減と、25ヵ月連続でマイナスとなっていますが、弊社は2024春季生活闘争(春闘)の賃上げ効果により、実質賃金の前年同月比の伸びは7-9月期にプラスに転じる可能性が高いとみています。実質賃金のプラス転換は、消費回復やデフレ脱却につながることから、株価には好材料といえます。
以上より、企業業績、企業改革、賃金の3つのポイントについては、さらなる進展の材料が7-9月期中にも確認される公算は大きいと思われます。特に、企業改革や賃金に関する好材料は、日本企業や日本経済の構造変化の証左であり、企業業績の持続的な改善期待につながりやすく、海外投資家の日本株再評価の根拠になり得ると考えます。日経平均は7-9月期中に上昇基調を回復し、年末42,200円の着地を予想しています。
(2024年6月26日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【日経平均は年末42,200円へ】日本株が上昇基調を回復するための“条件”【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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