「口腔ケア」の実践によって、患者の健康をサポート
冒頭から暗い話ばかり書きましたが、実は解決策があるのです。それが、私が本書を書いている理由だからです。
私は、一般社団法人包括安心サポート研究所という会社の理事です。この会社は、みなさんが安心して老後を過ごせるよう、サポートする会社です。でも、普通の終活をサポートする会社と違うのは、私が医療の専門家であると同時に、歯科医師でもあるからです。
私は、この介護制度が始まる2000年より前、祖母が介護を受け亡くなるまで自宅で家族でみとるという経験をしています。当然、認知症の祖母でした。まだ、ケアマネージャーやデイサービスという言葉ができたばかりで、今のようにしっかりとした制度ではなかったので大変でした。
また、歯科の介護保険による往診制度が認められる前の時代で、歯科医師が寝たきりの方、認知症の方の治療に苦慮した時代の経験も持っています。当時、訪問診療のルールを歯科医師会や駐車の問題を警察署などと相談しながら作っていた時代の経験もあります。
加えて、病床280床ある精神科病院の理事長を務め、高齢のうつ病や統合失調症、そして認知症の患者さんたちを理事長として、また歯科医師として治療し、経営改善した経験を持っています。
この病院では、口腔ケアを実践することで、それまで年に2~3名は夜勤中に誤嚥性肺炎で亡くなる方がいたのをゼロにした実績もあります。また、義歯を装着し、咀嚼と嚥下ができるようになり、誤嚥がなくなることで胃ろうを外せたり、食いしばれるようになって全身に力が入るので立って歩けるようになった患者さんを多数だすことができたりしたのです。
そうです、歯科治療によって患者さんのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を上げ、健康寿命を延伸することに成功したのです。
健康寿命を延ばすためには「予防医療」が重要に
保険や年金、そして相続やお墓のことも大事です。しかし、健康寿命を延ばすのは、医療保険や生命保険ではありません。健康寿命を延ばすのは、「正しい医療」です。それも、超々高齢社会ではこれまでの常識や現在の国民健康保険制度の治療ではダメなのです。
現在の国民健康保険制度では、糖尿病が増え(50年で50倍も患者が増えました)、うつ病が増え、認知症が増え続けています。老人の増加数以上に病気が増えているのです。それは、現在の日本の保健医療制度は「療養に対する給付」が原則であるからです。
「療養に対する給付」とは、わかりやすく言えば、「病気になったら、保険を給付します。でも、予防はしませんよ。だって、保険なんですから。予防は自費で自分でやりなさいよ」という、社会制度なのです。
海外では、自費治療+民間保険が中心、というよりほとんどです。東南アジアや中国ですら自費治療です。なぜでしょうか?
自費治療ということは、国民は自動車保険のように民間保険会社に加入し、保険料が上がらないように、予防に力を入れるからです。医師側も、治療が再発すると保険会社からの支払いが下がりますから、再発のしない、予防医療に力を入れます。
しかし、現在の日本の保険制度は出来高払い制度ですから、医師や医療機関側も、検査をすればするほど、薬を出せば出すほど、病気が治らなければ治らないほど(つまり、糖尿病や高血圧症のような慢性疾患患者が増えれば増えるほど)、儲かるのです。そしてその財源は、みなさんが毎月払っている医療費と税金なので、罪悪感がないのです。
本書は、正しい老後の過ごし方を示すとともに、健康寿命を上げる正しい方法と、そのための正しい医療について、そしてその上でどのように正しい終活をしたよいか、を詳しく述べます。
老後は決して苦しいものではありません。しかし、病気になってからでは、自分のみならず、家族にも経済的負担・心理的負担・時間的負担をかけてしまいます。
エンディングノートの中にも、「どのようにしたら、健康寿命を延ばせることが正しい医療でできるか?」という新しい項目を入れることを我々は強く提案します!