日本のデフレと長期停滞を長引かせた「政策」の誤り
ここで日本の停滞を長期化させたあと1つの理由、政策の誤りに触れておく必要がある。
その第1は、問題解決の先送りである。バブル崩壊の1990年から1997年まで、政府も企業、金融機関も問題隠蔽、責任転嫁、財政テコ入れによる弥縫策で痛みを伴う本質的解決を図らず、問題を先送りした。
1997年の金融機関破綻の危機が発生してようやく痛みを伴う金融構造改革に着手、改革の対価として銀行に公的資本が注入され、不良債権が政府・日銀に肩代わりされた。なお投入された公的資金はSBI新生銀行、地銀2行を除き完済されている。
2003年以降日本経済は回復に転じたが、ここで第2の誤りが生じた。時期尚早の金融・財政引き締めへの転換である。それに運悪くリーマンショックが重なり、日本経済はWボトムに陥った。
リーマンショックはすべて米国など海外での金融危機であった。しかしその震源地から最も遠かった日本がもっとも大きな経済的打撃を受け、株価ももっとも長く低迷した。
尚早の政策引き締めが株価と不動産価格を本源的価値以上に押し下げ、付加的なコストを企業に与え、回復に転じていた日本経済と株価をWボトムに陥れた。
日本の土地と株式を合計した国富時価総額は、1989年末3,142兆円でピークをつけ2002年末の1,723兆円でいったん底入れし回復に転じたが、リーマンショック後さらに下落し2011年末1,512兆円になった(なお2023年末では2410兆円と顕著に回復している)。
この二番底は正しい政策を取っていれば回避できたはずである。それは中国にとって、他山の石になると思われる。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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