(※写真はイメージです/PIXTA)

注目の米大統領選まで、半年を切りました。選挙結果に予断は許されませんが、もしもドナルド・トランプ氏が米国大統領に再選した場合、経済はどのように変化するのでしょうか。株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏が、トランプ優勢の理由と米国経済の現状、トランプ再選の場合打ち出される可能性が高い政策について解説します。

4件の刑事訴追も…米大統領選「トランプ優勢」の謎

世界最大の政治経済イベント米国大統領選挙が早くも半年後に迫ってきた。驚くべきは天衣無縫のヤンチャものの印象が強烈なトランプ氏が再選される可能性が強いと伝えられていることである。4件の刑事訴追を受けており、5月30日には大統領経験者として初めて有罪評決を受けたが大統領選挙への悪影響は限定的とみられている。

 

前回の大統領選挙でのバイデン勝利を盗まれたものとまったく認めず、現大統領の正当性を頭から否定し続けているトランプ氏は、1年前までは死に体とすらみられていた。

 

それが刑事訴追が始まると、政治的迫害を受けているというキャンペーンが功を奏し、かえって支持率が高まった。選挙勝敗の鍵を握る接戦7州(アリゾナ、ジョージア、ネバダ、ミシガン、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ウィスコンシン)をみると、前回はバイデン氏が6勝したのに対して、今回はすべての州でトランプ氏が優勢との調査結果となっている。

 

この情勢はメディアや専門家の予測を大きく覆すものである。なぜであろうか。

“トランプ優勢”のワケ…米国経済に起きている2つの変化

米国の経済社会の底流で大きな構造変化が起きており、その変化に対するトランプ氏の果敢な挑戦が、有権者と嚙み合い始めている、と考えざるを得ない。明らかに米国経済社会には2つの変化が起きている。

 

1.テクノロジーの進歩と中間層の消失

その第1は、テクノロジーの進歩と国際分業の進展による雇用構造の変化と中間層の消失である。

 

出所:米国労働省、武者リサーチ/米商務省、武者リサーチ
[図表1]大きく減少した製造業雇用 /[図表2]長期低下趨勢にある労働分配率 出所:米国労働省、武者リサーチ/米商務省、武者リサーチ

 

かつての中間層を支えた製造業はグローバリゼーションによって劇的に海外依存を強め雇用が減少した。

 

50年前の1970年代まで米国は衣料、玩具等の軽工業から鉄鋼、造船、化学などの重工業、電気、通信、半導体などのエレクトロニクス産業、機械、自動車産業等すべての製造業分野で世界最大の規模を擁していた。

 

米国の製造業製品(財)輸入依存度は1割に過ぎなかったが、いまでは8~9割を輸入に頼るようになり、圧倒的に雇用が失われた。

 

それを埋めた新規雇用は高賃金のビジネスサービス、金融、情報通信産業と、スキル度が低く相対的低賃金の個人サービス、外食、娯楽、医療・介護など多様で格差がある産業群であった。

 

その結果労働分配率が60%弱から50%弱へと低下し、賃金上昇にもブレーキがかかり、家計は収入の多くを賃金ではなく社会保険や公的扶助と株式など資産所得に依存するようになった。それは資産保有者と持たざる者の格差を拡大させることとなった。

 

出所:米商務省、武者リサーチ
[図表3]米国家計所得構成比推移、賃金比率の低下を資産所得と政府支出でカバー 出所:米商務省、武者リサーチ

 

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※本記事は、武者リサーチが2024年6月2日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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