妻に先立たれた男性、心配する子に激怒「ジジイ扱いすんな!」
40代の男性は、自分の父親のことを振り返る。
「健康だと思っていた60代の母が突然死してしまいました。3歳年上で、70代になったばかりの父は、恐らく母が先に亡くなるなんて考えたこともなかったのでしょうね。悲しむというより、呆然自失といった様子で…」
男性の父親は、大企業でかなりの出世を果たしたエリートだった。定年退職後も関連会社に請われて仕事を続け、完全に引退できたのは60代後半になってから。
「両親はとても仲がよく、母は父の引退を心待ちにしていました。ようやくゆっくり過ごせると思っていたのですが、本当に残念でした」
男性はすでに結婚し、自分の家庭を築いている。姉が1人いるが、配偶者の出身地である遠方に嫁ぎ、実家には頻繁に足を運べない。一度は男性も同居を提案したが、父親は首を縦には降らなかった。
「こんな年になって、人に気を使って暮らすのはイヤだ、というんです。私の妻も〈お義父さん、心配だわ〉としきりに言っていたのですが…」
結局、男性の父親は、母親がいなくなった広い戸建て住宅で、1人暮らしをすることに。家政婦さんに入ってもらい、身の回りの世話をしてもらったこともあったというが、他人が家にいるのが落ち着かないといって、父親が勝手に断ってしまった。
「心配した姉が、〈年金月25万円程度なら、自立型有料老人ホームがあるわよ。1人だと心配だし、どう?〉と提案したのですが、それがよくなかった。〈俺をモウロクジジイ扱いするのかーッ!!〉と、真っ赤になって怒鳴り散らされましたよ」
父親の逆鱗に触れた男性と姉は、実家から蹴り出されるようにして、追い返されてしまったという。
そこからは、父親の姿勢は頑なだった。電話をしてもそっけなく、「来なくていい!」と不機嫌な声でガチャ切り。とはいえ、長年会社でしっかり働いてきた人なのだから、身の回りのことぐらいできるだろうと思い、しばらく静観することにした。