(※写真はイメージです/PIXTA)

現役時代に高収入であっても「老後破産」は決して他人事ではありません。68歳の隆さん(仮名)も、年金・退職金ともに潤沢な老後資産があったにもかかわらず「まさかの出来事」により老後破産危機に陥ってしまいました……。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、事例をもとに「老後破産危機」の対策・予防策を解説します。

“気づかないフリ”を続けた隆さん…残された選択肢は

キャッシュカードが手元にあり、暗証番号がわかっていれば、ATMを利用してお金を出金することは可能です。しかし、隆さんは現状、カードの在りかも暗証番号もわからない状態です。

 

洋子さんが窓口で行員と問題なくやりとりができれば出金はできますが、もしそれが難しい場合には、「成年後見人制度」を利用することで必要なお金を出金することができます。

 

ただし、成年後見人は被後見人(今回の場合は洋子さん)のために財産管理を行うため、洋子さんのお金を隆さん自身のために使うことには制限がかかります。

洋子さんが認知症とわかる“前”にできた「3つ」の対策

FPから説明を受け、成年後見制度を利用すれば預貯金を引き出せることがわかり、ひとまず安心した隆さん。

 

しかし、できれば洋子さんが認知症の診断を受ける前に次の備えをしておくと、よりスムーズでした。

 

1.「エンディングノート」の活用

認知症になった場合や、介護が必要になった場合に備えて、必要な情報をあらかじめノートなどに記載し、家族間で情報共有しておけば、いざというときもあわてずに対応することができます。

 

今回の事例であれば、洋子さんのキャッシュカードの保管場所と暗証番号をノートに控えていれば、隆さんはそれほど慌てることはなかったかもしれません。

 

2.「代理人カード」を作成する

本人が元気なうちに、「代理人カード」を作成しておくことで、名義人に代わってATMなどで預貯金の入出金が可能となります。洋子さんが認知症になっても、口座から生活費を出金することができました。

 

3.「予約型代理人サービス」「代理人指名手続」

名称はさまざまですが、代理人(原則は親族)が本人に代わって銀行でのさまざまな手続きが可能となるサービスも存在します。

 

たとえば、円預金の入出金、外貨預金や投資信託など運用性商品の売却、住所・電話番号変更、残高証明書発行などができます。口座名義人である本人が元気なうちに手続きをする必要がありますが、費用は無料です。

 

経済的なゆとりも「病気」には勝てない…“もしもの事態”に備えを

経済的にゆとりがあっても、病気になってしまうと状況が一変します。認知症は一緒に生活している家族からすると気づきにくく、気づいても受け入れがたいものです。「まさか認知症になるなんて」「どのように関わればよいのかわからない」という声はよく聞かれます。

 

機会があれば「認知症サポーター養成講座」などを受講しておくと、認知症に対してどのように対応すればよいのか基本的なことを知ることができます。今回の事例のように老後破産の危機に陥らないためにも、介護や認知症の情報を集めて備えをしておきましょう。

 

 

武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役

 

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※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

【参照】
■日本弁護士連合会消費者問題対策委員会「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査【報告編】(https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2020/2020_hasan_kojinsaisei_1.pdf)
■厚生労働省「認知症サポーター」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508.html)
■特定非営利活動法人 地域共生政策自治体連携機構「認知症サポーターキャラバン 」(https://www.caravanmate.com/)

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