下落相場で「順張り」と「逆張り」、どちらが有利か?
株式を買うタイミングとして大きく「順張り」と「逆張り」の2種類に分類する方法があります。「順張り」とは、株価が上昇している(上昇トレンドにある)最中に新規に買うことをいいます。「逆張り」とは、株価が下落している(下降トレンドにある)最中に新規に買うことです。
順張りと逆張り、どちらを選ぶべきかは、昔から議論の尽きないテーマです。筆者の今までの経験では、逆張りより順張りの方が安全です。上昇トレンドにある銘柄を買った方がよい成果が出ています。逆張りはナンピン買いの結果、塩漬け株を保有することにつながり、個人投資家が株式投資で失敗する典型的なパターンに陥る危険性が大いにあります。
逆張りは、株価が下げている途中に「そろそろ下げ止まるだろう」とか、「さすがに売られ過ぎだ」と感じて新規買いの行動に出るわけですから、個人的な感覚が買いのタイミングに非常に大きな影響を与えます。問題なのは、この個人的な感覚が本当に正しいものなのか? という点です。
インターネットの普及その他で格段に情報量が増えたとはいえ、個人投資家が得られる情報の「正確性」や「鮮度」は、プロの投資家にまだまだ劣ります。そのため限られた情報をもとにして「売られ過ぎ」と感じても、それが全くの見当違いである場合は決して珍しくありません。
ナンピン買いや塩漬け株につながりやすい「逆張り」
また、逆張りで買ったあとに株価がさらに下落した場合、売られ過ぎと思って買ったのにさらに株価が下がるのですから、自然と「ナンピン買い」につながります。しかし、バブル崩壊、ITバブル崩壊、新興市場バブル崩壊と、過去の日本株の動きを見ると、「さすがに売られ過ぎ」と誰もが思う水準からさらに5分の1、10分の1へと売りたたかれることも少なくありません。
株価が下落途中の銘柄に逆張りやナンピン買いを繰り返して最終的に利益を上げるには、どこまで株価が下げてもナンピン買いを繰り返し、その後の小さな株価上昇で損益をプラスに持っていけるだけのばく大な資金が必要です。個人投資家ではたちまち資金がパンクして塩漬け株のオンパレードになりかねません。
損切り価格を設定して逆張りで買う方法もあります。そうすれば大負けは防げます。しかし、株価が下がり切る前に逆張りをスタートさせると、たとえ損切りが実行できても、「新規買い→損切り→再び新規買い→再び損切り……」というように、損切りの悪循環によって損失が積み上がってしまいます。
現実問題として、逆張りで新規買いするより、株価の下げ止まりを待ってから順張りで新規買いした方が結果的に安く買えることが非常に多いのです。
底値買いや押し目買いも「順張り」を心がけよう
もちろん、株式投資は安く買って高く売るのがセオリーです。しかし、いくら底値買いや押し目買いを狙うとしても、株価の下落途中で買うのは危険です。どこまで下がるのか、誰にも分からないからです。
したがって、例えば、底値買いであれば、大きな下落のあとで長い下ヒゲをつけた直後や、下落したあと、5%程度上昇したところで買い、底割れすれば損切りするようにします。押し目買いであれば、押し目形成中は手を出さず、押し目底と思われる安値から3~5%程度反発したところで買い、押し目底と思われる安値を割り込んだら損切りするようにします。底値買いや押し目買いであっても、あくまでも「順張り」を心がけるようにすべきです。
もちろん順張りで買った場合も、株価が短期間で安値から5倍、10倍に上昇したあとの天井近辺や、急上昇後の長い上ヒゲ出現直後など、買い時としてふさわしくないタイミングで買えば、適切に損切りをしないと大失敗する可能性は同様にあります。
少なくとも株価の下落途中では買わない、株価が上昇トレンドの途中でも大きく上昇してしまったものは買わない、天井形成が疑われる株価チャートが出現したら買わない、もし、これらの状況で買うとしても損切りをしっかりと実行して、大失敗の可能性を軽減するようにしてください。
●下ヒゲ 株価の値動きは通常、「ローソク足チャート」というグラフで見ます。ローソク足は期間中の始値と終値がローソク実体の上辺・下辺となり、期間中の高値と安値がその実体から突き出したヒゲと呼ばれる線で示されます。「長い下ヒゲ」は株価が安値をつけたものの、その安値から大きく反転上昇して、期間中の取引を終えたことを示します。よって、株価が下げ止まる前兆と見なすことができるのです。
足立武志
足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー 株式会社マネーガーディアン代表取締役