イオン・イトーヨーカ堂・ヤオコー…専門小売店から全国大型チェーン店へ
小売業では、かつてはスーパーマーケットといった業態はなく、魚屋・肉屋・八百屋・乾物屋・呉服屋など、専門の小売店に分かれていました。そのなかから全国チェーンの大型スーパーや地方スーパーが登場してきました。
イオンは三重県四日市の呉服店が源流です。イトーヨーカ堂は浅草にあった洋品店から、ヤオコーは埼玉県小川町の八百幸商店という八百屋から発展したものです。スーパーマーケットは伝統的な小売店から新規事業によって生まれた、といえるのではないでしょうか。
リクルート…誰も気づいていない潜在的ニーズの発見
新規事業を次々と立ち上げることによって成長してきた企業に、リクルートがあります。1960年に、大学新聞に企業の採用説明会や求人広告を掲載する事業で創業しました。創業2年目に新卒採用の広告だけを集めた情報誌(現:リクナビ)を創刊し、世の中になかった新規事業を創造しました。
その後2000年までのあいだに、住宅の売買情報誌である『住宅情報(現:SUUMO 新築マンション)』を創刊したことを皮切りに、女性のための転職情報誌『とらばーゆ』、中古車売買の専門情報誌『カーセンサー』、旅行関連情報誌『じゃらん』、結婚関連情報誌『ゼクシィ』、グルメなど日常生活を取り上げた情報誌『Hot Pepper』、などを次々と創刊しました。
経営理念に示されている「まだ、ここにない、出会い。」を実現し、発展してきたといえます。
有名企業が発展してきた理由はそれぞれ
ここまで、よく知られている事例を見てきました。
ホンダ、パナソニック、スーパーマーケットの事例は、社会の変化や新たに生じるニーズに対応して、新製品を次々と開発したり、業態を変えたりして、大きく拡大したケースです。
富士フイルムの事例は、既存事業のライフサイクルが終焉を迎えることと並行して、既存事業で培った技術力を生かして新規事業を創出し、さらなる発展を遂げたケースといえます。
リクルートの事例はこれらと異なり、最初から新規事業開発が宿命づけられている企業のように感じられます。「人と人との出会い」や「人と社会とのつながり」を実現するとの視点から、事業を次々と創出し、発展してきました。顕在化しつつあるニーズに対応するというよりも、まだ誰も気づいていない潜在的なニーズを発見し、0から事業を創出し続けたケースといえるのではないでしょうか。
中野 正也
株式会社グローバル事業開発研究所
代表取締役
※本記事は『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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