「1,000万円プレーヤー」何の不自由もなかったはずが
不動産デベロッパーにて働いていた下野さん(55歳・男性/仮名)。俗に言う「1,000万円プレーヤー」でしたが、もう十分に働いたと、早期退職を決意。その後は比較的裕福な生活を送っていました。
国税庁のレポート『令和4年分 民間給与実態統計調査』によると、正規社員の平均給与は約523万円です(非正規社員の平均給与は約201万円)です。平均よりもはるかに多い給料をもらっていたことに加え、勤続年数が長かったこともあり、退職金はなんと2,000万円。世間を騒がせた「老後2,000万円問題」もこれで解決、と一安心でした。
下野さんが住むのは、首都圏近郊、築20年の1LDKタワマンです。賃料は25万円。家族3人暮らしでしたが、結婚を機に娘は地方に移住、ここ数年は妻と2人で仲良く暮らしていました。
しかし、突然の悲劇が下野さんを襲います。亡くなった父が、実は連帯保証人であったことが判明したのです。一人っ子長男だった下野さん。母はすでに他界しており、遺産はすべて相続していました。
いきなり1,500万円もの請求が届いたのです。弁護士に相談すればよかったものの、下野さんは言われるがまま債務を完済しました。弁護士に相談していれば相続放棄が認められた可能性もあります。
老後の生活も一安心……だったはずが、急転直下の事態に。
厚生労働省の発表によると、現在日本人の平均寿命は女性87.09歳、男性81.05歳です。老い先20年超。恐ろしいほどの老後不安に襲われました。退職金を除き、貯蓄は1,000万円ほどありましたが、無職2人世帯として生きていくには心もとない数字です。
「老後資金を貯めなければ」。そう決意した下野さんでしたが、間もなく、厳しい現実に直面しました。生活レベルを下げることの難しさを痛感したのです。
「娘も嫁いでいったことだし、妻と『もっと狭くて安い家に移ろうか』という話になったのですが、どこもしっくりこない。今のタワマンが居心地よすぎるんです。とにかく景色もいいし、利便性も高い。
普通の分譲マンションを見ても、部屋が狭かったり、今より見た目が古かったりと、懸念要素がある。都心からは出たくないんです。
一軒家も考えましたが、今の広さと同等の家を探すと、なかなか厳しい値段だった。この年齢ですから、融資の面も不安がある」