“ルール”から外れる誠二さんに向けられた厳しい目
しかし残念ながら、情熱だけでは思うようにことは進まない。
学習指導要領に捉われずに独自のメソッドを展開する誠二さんを、必ずしも良しとしない上司や同僚がいた。また、こうした活動には一定のコストがかかるが、学校が許容できる予算の制約も、彼の活動を妨げる要因になっていた。
教師としての活動に限界を感じた誠二さんは、自らの手でより多くの子どもたちに自分の教育方法を広める決意を固めた。「教育コンテンツ」という独自の資産を武器にビジネスとして展開しようと、起業する道を選んだのだ。
誠二さんのプログラムに共感する保護者の支持もあり、私設のオリジナル授業はまずまずの滑り出しであった。そこで、より多くの理解を得ることとコンテンツの磨き上げを目的に、誠二さんは熱意溢れるその教育方法とその成果についてまとめ、SNSで共有し始めた。
SNSで猛批判…起業後も窮地に追い込まれた誠二さん
ところが……。発信したコンテンツの一部が誤解を招き、「教育界の伝統的な手法を否定している」との猛烈な批判を浴びることになったのだ。
インタラクティブな学習方法を推奨する誠二さんの発言の一部を捉えて、「教室での本来の学びを否定している」との声に混ざって、「子どもたちの自主性を重視するとしているが、子どもに過剰なストレスを与えている」との批判もあった。批判者のなかには、なんとかつての上司もいたという。
この炎上は、彼がこれまで築いてきた信頼関係に大きな打撃を与え、支持者だったはずの保護者までもが、誠二さんからしだいに距離を置き始めた。
批判が波紋を広げるにつれ、誠二さんの教育プログラムに対する情熱は、挫折感に塗り替えられた。彼は深く落ち込み、気がつくとすべての行動力の源となっていた自身の教育理念さえも疑い始めるようになっていた。
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