子どもたちの未来を作る…教育への「熱意」が起業のタネに
田中誠二さん(仮名)は、35歳で教師を辞めるその日まで、公立小学校教師としての職責をまっとうした。そんな彼がこの若さで教壇を去ったのには理由がある。
教師時代の月収は30万円ほどで、1年を通じても500万円に満たない。だが、彼のキャリアの目的は金銭的な報酬にあるのではなく、子どもたちの未来を形作ることにあった。特に関心があったのは、学校に馴染めずに不登校になってしまう子どもたちへの特別な教育プログラムだ。
担当した特別支援学級での成功体験が、誠二さんの人生の新たな扉を開いた。通常のカリキュラムでは見放されがちな彼らだったが、誠二さん独自の教育法によってしだいに心を開き、顕著な成長を遂げたのである。
彼が重視したのは、「ロールプレイ」や「グループ活動」といわれるものだ。
ロールプレイとは、子どもたちが異なる役割を演じることにより、他人の視点を理解し、共感力を育むことができる学習方法のこと。
誠二さんは、「友達とのけんかの解決方法」「運動会の騎馬戦での協力方法」といった、日常でありそうな特定の状況や問題解決が必要なシナリオをいくつか用意し、子どもたちにそれぞれの役割を割り当てた。こうしたシナリオを通じて、子どもたちは交渉術や自分の意見の表現方法、人の話を聞くスキルなどを楽しみながら実践的に学ぶことができた。
さらに誠二さんは、ロールプレイに「グループ活動」を取り入れた。クラスを数人ずつのグループに分け、アートプロジェクトや科学実験、スポーツゲームなどを行うことで、子どもたちが自然に互いの強みを活かし、グループ内での役割分担を理解し、共同で問題解決を図る経験を得られるように工夫した。
子どもたちがこうした活動を通じて社会性を身につけ、自己表現を学び、少しずつ対人関係が改善されていく様子に、保護者たちも深い感動を覚えたようだ。誠二さんのもとには、熱い感謝の言葉が届いた。
誠二さん自身も、子どもたちがお互いに協力し合い、お互いを尊重する姿は、「教育の本質を象徴している」と感銘を受け、自身のやり方に確信を持ったという。
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