またたくまに広がった「チー牛」という差別用語
あなたは、「チー牛」というネットスラングをご存じだろうか。
これはオタクや隠キャ、またコミュ障といった男性に対して使われる蔑称で、弱者男性を揶揄(やゆ)する際にも使われる。
もともとは牛丼チェーン店の人気メニュー「三食チーズ牛丼」を指す言葉だった。しかし、当時高校生だった、いびりょさんが2008年頃に描いた「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りをお願いします」と、メガネをかけた男性が無表情で注文している画像が2018年頃にネット掲示板で拡散し、旗色は変わった。
偶然、その自画像が多くの方がイメージする「モテないオタク」を忠実に再現していたことを理由に、男性を差別する表現へ使われるようになったのだ。そして、ありとあらゆる罵詈雑言が、チー牛とみなされた男性へ向けられ始めた。
チー牛という単語は、これまでに「オタク」「根暗」「陰キャ」「非モテ」「童貞」といった、多数の(特に)男性をバカにする単語の集大成とも言えるフレーズである。また、非モテという単語が、生きづらさを抱える男性を意味する「弱者男性」と混同され、いっしょくたにして扱われる傾向がある。そのため、弱者男性の支援を訴えてきた著者としては、看過できなかった。
誰もが笑顔で「チー牛」と“イジる”
チー牛は現在、弱者男性を差別したい時に、もっとも気軽に使われるフレーズといえるかもしれない。たとえば、Xで「チー牛」と検索すると、以下のような投稿がわんさか出てくる。
「美人の投稿に、チー牛からの嫉妬にまみれたコメントが多すぎる。あいつらブサイクだからって、金持ちと容姿に恵まれた人に対して噛みつきすぎでしょ」
著者註:そのまま引用すると、投稿された方へのバッシングにつながるため改変いたしました。
しかし、もしこれらの投稿が男女で逆転していたら、みなさんはどう思うだろうか。
などとSNS上で書いたら、炎上必至だろう。
だが、2024年現在はそうならないのである。
このように、SNSやインターネット上で「ブサイク」「キモい」と叩いて揶揄(やゆ)することになんのなんの違和感ももたれない男性への差別用語、それがチー牛なのだ。