暴力的な男性が、抵抗できない弱者男性を傷つけている
実際に、筆者が男性500名を対象に「女性は感情的になりやすい」「女性はか弱い存在なので、守らなければならない」といった、アンコンシャス・バイアス(差別的な無意識の思い込みの)有無を調査した。結果、偏見がある男性は弱者男性44%、強者男性45%と、その割合に差はみられなかった。
また、「女性は男性から犯罪被害にあいやすい」と思われがちだが、男性のほうが、被害にあいやすい。
「令和4年版 犯罪白書」*では、犯罪被害に遭った被害者の男女比は、男性64.2%、女性35.8%と報告されている。つまり、男性は女性の2倍近くも犯罪に巻き込まれやすいのだ。
一方、加害者についても約77%と男性の方が割合が高い。このことから、犯罪は男性から男性への加害が多いということがわかる。
こういった事実を踏まえると、加害性を持つ男性は、弱者男性を狙う。そして、女性はその弱者男性こそが加害者に見えるとおびえる。この世は弱者男性から見て、あまりにも偏見にまみれた世界なのだ。
実際に先日、フェミニストの上野千鶴子教授が共同親権についてこうXで発言した。
離婚理由の第1位は性格の不一致で、次が浮気だ。離婚には理由があるが、ツートップは親権と無関係である。続く第3位はDVだが、実は横浜市の調査**によると、女性のほうがDV加害者の割合が高いというデータもある。「DVだから加害者は男だ」というのは、それこそが無意識の偏見であろう。
周りから「男性は常に強者である」という偏見を抱かれやすい。そして、実際には弱者である男性も、並べて差別されているのだ。
*「令和4年版 犯罪白書」
https://www.moj.go.jp/content/001387336.pdf
**「デートDVについての意識・実態調査報告書」https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/danjo/chosa/h23.files/danjo_datedv19.pdf
男女関係なく「弱者がいる」という当然の話を始めよう
DV、いじめ、虐待といった加害を受けると、人は簡単に弱者となる。そこに男女は関係ない。だからこそ、日本にはセーフティーネットとして生活保護や就労支援が用意されている。
しかし、保障の手厚さ、支援へのアクセスのしやすさは男女平等だろうか。たとえば、筆者は弱者男性支援団体と、弱者女性支援団体の割合を調べたことがある。その割合は、なんと1:4,000だった。女性は圧倒的に支援されやすいのだ。
また、男性は遺族年金の受給条件などで女性より金額が限定されるなど、差別的な待遇を受けている。国の制度からして「男性は強いもの」という偏見が入り交じるのだ。まして、民間企業では「男性だから」長く働かせて当たり前、「男性だから」転勤させて当たり前といった、差別的な待遇がまかり通っていないだろうか。
さらに、弱者になったときを考えれば、そこには男も女もない。だが、目の前の男性が生きづらい思いをしているとき、「男性は強者である」という偏見のもと、支援が手薄になっていないだろうか。
今こそ、弱者への支援を、男女平等に是正すべきときがきたのだ。
トイアンナ
ライター/経営者