前回は、建設業での受注確率を上げるための「営業戦略」の見直し方を説明しました。今回は、この営業戦略に合わせた「取引先」の見直し方を具体的に見ていきます。

取引先から切られるのを覚悟で「値上げ」をする

営業戦略の見直しに合わせ、取引先の見直しも行いたい。取引先別のこれまでの売上や利益額、利益率をベースにし、それぞれの取引先の信用度や財務状態なども考慮した上で、今後の受注計画を立ててみるのだ。

 

利益が出ていないのに、長年の流れで付き合っている取引先はないだろうか。利益は少ないが、仕事は途切れることはなく売上もある程度上がっているので付き合いを続けているような取引先だ。その客先の年間の総売上高と総粗利益を出して、ここ数年の推移も併せて見てほしい。思っている以上に利益が出ていないのが分かるはずだ。利益も大して上がらないのに、細かな注文だけは数多く来るものだから、営業だけでなく内勤の社員も含めて対応しなければならない。一体どれだけの労力がその得意先にかかっているかを、冷静に見てほしい。冷静に考えれば、そんな取引先とは付き合えないはずである。

 

対処法としては、「一斉に値上げをする」。これしかない【図表】。その取引先に対する販売価格を上げるのである。得意先からはいろいろ言われるだろうが、コストが「実際はこれくらいかかっていた」と言うしかない。そうすると「売上が落ちる」とまた言われそうだが、薄利で社員の労力が必要以上にかかっている得意先である。薄利は取れていても、営業利益ベースでは赤字だろう。売上など下がってもいいから、切られるのを覚悟で値上げするしかない。

 

【図表 利益が出ていない取引先の見直し方】

 

 

長続きはしない「価格交渉しかしない」会社

しかし、これも経験談なのだが、こういった得意先に値上げしても、思ったほど途切れないものである。多少値上げされても、その得意先もいつもの流れで注文したほうが楽だから注文してくる。ただ、やはり注文数は落ちてくるだろう。しかし、単価が上がり、利益も上がってくるので、売上が落ちている割には利益は取れているという結果になることが多い。

 

ただ、もし本当に発注がなくなったらなくなったで、他の利益が高い得意先に力を投入してシェアを上げるなどの対策を取ればよい。これも重要な「経営判断」の一つである。

 

特に、「とにかく安く」ということばかりを要望してくる得意先とは、関係を見直さなければならない。いつも価格のことしか言わない得意先、何度も指し値をしてきたり、他社と延々と競わせる得意先は、いずれ他の会社からも相手にされないようになる。

 

私も営業時代にそういった得意先があったが、もう先方の態度に限界を感じ、営業に行くのをやめた。2年後にその会社は倒産していた。

 

いくらコストを落とすことが大事だといっても、限度があるのである。外注先を天秤にかけ続け、価格交渉しかしない会社は、きっと長続きしない。むしろ、下手をして最後まで付き合うと不良債権をつかまされることにもなりかねない。

 

取引先の経営者の人柄も判断のポイントとなる。いつも横柄な態度で、自社の営業担当者にプレッシャーをかけてくるような会社は、無理に付き合う必要はない。現場に出ていない上司であっても、相手の経営者がどんな人物かは、営業担当者から具体的なやり取りを聞けばだいたい判断できる。

 

このように、「必要粗利益額」と「利益率」を重視すると、上位の取引先の顔ぶれが入れ替わることは少なくない。

本連載は、2016年9月14日刊行の書籍『たった1年で利益を10倍にする 建設業のための経営改善バイブル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で利益を10倍にする 建設業のための経営改善バイブル

たった1年で利益を10倍にする 建設業のための経営改善バイブル

中西 宏一

幻冬舎メディアコンサルティング

ゼネコン、工務店、設備会社…etc オリンピック景気に隠れて、業界崩壊は刻一刻と近づいている。 「経費削減」「リストラ」一切なしで高利益体質へと変革する経営者必読の書。劇的な経営改善のために知るべきことを網羅!

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