定額減税の仕組み
具体的な給与計算のやり方を解説する前に、まずは定額減税という制度の仕組みについて解説していきます。
(1)定額減税の対象者
定額減税が受けられるのは、合計所得が1,805万円以下(給与収入のみなら年収約2,000万円以下)の居住者です。したがってほとんどの方は定額減税が受けられますが、年収2,000万円(子育て世帯等なら2,015万円)を超える方や、海外に住んでいる非居住者などは対象外です。
(2)定額減税の金額
定額減税の金額は、本人と扶養家族1人あたり4万円(所得税3万円+住民税1万円)です。例えば世帯主である夫と扶養の妻、子供2人の4人家族であれば16万円(4万円×4人)の定額減税が受けられます。
(3)扶養家族の範囲 ※配偶者控除や扶養控除の対象とは別物
ここでいう扶養家族(同一生計配偶者+扶養親族)とは、合計所得が48万円以下(給与収入のみなら年収103万円以下)の居住者です(青色事業専従者と白色事業専従者は除く)。
(※合計所得が48万円を超える家族は、その家族自身に所得税や住民税がかかるため、本人が定額減税を受けることになります。)
配偶者控除や扶養控除の対象となる控除対象配偶者や控除対象扶養親族とは範囲が違うので、まったく別物と考えた方がいいでしょう。
例えば16歳未満の子は扶養控除が受けられませんが、定額減税は16歳未満でも受けられます。
逆に非居住者でも配偶者控除や扶養控除は要件を満たせば受けられますが、定額減税は非居住者である時点で対象外です。
また、世帯主の合計所得が900万円を超えると配偶者控除は減額されていきますが、定額減税は配偶者の分も満額受けられます。
定額減税では、とにかく年収103万円以下の居住者であれば、事業専従者でない限り扶養家族としてカウントしてもらえると覚えておきましょう。
(4)定額減税される年の違い
定額減税1人4万円のうち、所得税1人3万円分については「令和6年分の所得税」から、住民税1人1万円分については「令和6年度分の住民税」から減税されます。
この文章だけ見れば同じ年の税金が減額されるように見えますが、「令和6年分の所得税」は令和6年(令和6年1月1日~令和6年12月31日)の所得から計算され、令和6年12月の年末調整や令和7年3月の確定申告で納税が完了します。
一方で、「令和6年度分の住民税」は前年の令和5年(令和5年1月1日~令和5年12月31日)の所得から計算され、令和6年7月~令和7年5月の給与から特別徴収されて納税が完了します。
(※住民税の特別徴収は通常6月スタートですが、令和6年は定額減税の影響で7月スタートになっています。)
つまり、「令和6年分の所得税」は令和6年の所得をもとに、「令和6年度分の住民税」は令和5年の所得をもとに計算されているため、違う年の所得から計算された税金を減額することになります。
したがって、(1)の世帯主の合計所得は1,805万円以下か? (2)の扶養家族の合計所得は48万円以下か?などの所得の判定についても、所得税の方は令和6年の所得をもとに、住民税の方は令和5年の所得をもとに判定されます。
扶養親族の人数についても、「令和6年分の所得税」は令和6年12月31日時点、「令和6年度分の住民税」は令和5年12月31日時点の人数でカウントされるため、令和6年中に子が生まれた場合、その子は所得税3万円分の定額減税の対象にはなりますが、住民税1万円分の定額減税の対象にはなりません。
\「税務調査」関連セミナー/
相続税申告後、約1割の人が「税務調査」を経験?!
“申告漏れ”を指摘されないためのポイント>>11/19開催