一度弱者になった男性の救済策がない
こういった苦難があるにもかかわらず、ひとたび弱者男性に陥ると、男性は「自業自得」と責められやすい。だが、実際にかれらのあり方は「自己責任」といえるだろうか。
たとえば、いまの中年男性は多くが氷河期世代で就活を迎えている。バブル期の1990年度に2.77倍だった有効求人倍率(大卒)は、2000年までに0.99倍へ下がった。つまり、求人の数は約3分の1まで減少したのだ。
さらに、当時は就職できたとしても待遇の悪い会社が多く、長時間のサービス残業、パワハラ、セクハラが当たり前だった。それでいて、体を壊すなどして一度職歴に穴があくと、正規雇用に戻ることは今の若手よりも難しい。
現在、未婚の単身男性の約1割が、年収60万円未満である。
これを、すべて自己責任で済ませるのだろうか。
皆婚主義の復活ではない救済策を
では、かれらをどう支援すべきか。独身研究家であり、コラムニストの荒川和久氏がまとめたデータ*によると、既婚者は未婚者より約1.5倍幸福度が高く、さらに「未婚男性」のほうが幸福度は低い。なかでも、40代・50代の未婚男性は圧倒的に幸福度が低く、調査において「幸せである」と答えた男性はそれぞれ2割程度しかいない。このことから、男性の幸福度には「結婚」が大きく影響する。
そういった事情から、一部の過激派は「皆婚主義を復活させよう」と唱えている。皆婚主義とは、かつての日本で実現していたほぼ100%の結婚率である。これを実現していたのは、親同士の見合いなどで強制的に結婚相手が決まるシステムだった。しかし、こういったシステムで、自由恋愛を知る男女が幸せを感じられるとは思えず、現実的ではないだろう。
*『際立つ「40~50代未婚男性」幸福度の低さの背景』(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/455386
トイアンナ
ライター/経営者