選ばれない「弱者男性」たち
「弱者男性」とは、インターネット上で生まれた用語で、日本社会のなかで独身・貧困・障害など弱者になる要素を備えた男性たちのことである。
取材・アンケートをもとに『弱者男性の人口』を推定したところ、日本には最大1,504万人の弱者男性がいることがわかっている。日本の男性人口は6,075万人であるから、男性の約24%が何らかの弱者性を抱えていることになる。
弱者になる要素として、書籍『弱者男性1500万人時代』では16カテゴリーに分類した。その一部を、ここに掲載したい。
・介護者
・虐待サバイバー
・容姿のハンディのある人
・貧困
・非正規雇用、無職
・コミュニケーション弱者
つまり、たとえ普通の生まれ育ちをしており、本人に何の責任もなくとも、家族に要介護者がいたり、DVの被害者だったりすると、それだけで弱者性を帯び、フルタイム就労が難しい環境へ追いやられてしまう。
弱者男性には、誰でもなりうるのだ。
そして、一度弱者男性のカテゴリに陥ると、えてして結婚相手としても選ばれにくくなる。
たとえば、30歳で年収1,000万超えのエリートであっても、顔やコミュニケーション能力に課題があれば結婚できない。家族に要介護の人がいても断られる。虐待サバイバーで、PTSDを抱えており、日常生活に支障がある男性は選ばれにくい。
少しでも“欠点”があれば「選ばれない男性」になりうる
2020年の国勢調査によれば、「いずれ結婚するつもり」と答えた若年男性は86%いる。にもかかわらず、男性の生涯未婚率は28%にのぼる。つまり、多くの男性は「不本意な理由で未婚」状態にある、選ばれない男性なのだ。
たとえば、筆者の友人にも、自他共に認める弱者男性がいる。性格は明るく、とても優しい。友達も多い。それでも結婚はできない。なぜなら年収が低すぎたり、家族に課題を抱えた人がいたり、発達障害があったりといったハンデを見せると、婚活で敬遠されるからだ。
これは、女性から見れば「当然」だろう。だが、かつては年収1,000万円以上であったり、 実家に資産があったりすれば 、こういった男性も成婚できたのである。
筆者は婚活相談にも乗ることが多いが、最近は男女問わず相手に少しでも欠点があると「いい人なんだけど、やっぱり結婚しないほうがいいかもしれない。どうしよう」と相談されるケースが増えてきた。
自由意志で結婚する・しないを選べる女性にとって、難がある男性との結婚は「しないで独身でいたほうがマシ」なのである。筆者も女性であり、経済的に自立しているからこそ、それを否定するつもりはない。
だが、選ばれなかったかれらは、どうしようもなく孤独である。 そして、「妻」以外で中年男性の孤独を埋めてくれるコミュニティが、日本には限定されている。弱者男性は男性コミュニティからも阻害され、不審者扱いされるからだ。