日本の納税制度が重要視する「証拠」や「形式」
法人成りをして、きっちりとした「社内規定」を作成すれば、業務に必要な経費の枠を広げることができます。
法人と個人は、別人格の扱いになります。そのため、個人事業主時代には認められなかった経費が、法人成りすると経費と認められるようになります。前回紹介した社宅もその1つですが、それ以外にも就業規則や社内ルールを整備することで、経費の枠を増やすことができます。
このときに必要なのは、しっかりとした「社内規定」を作ることです。
わが国の税金を集める方式は「申告納税制度」という、みずからが手をあげ、自主責任で税金を納める制度です。この方式である以上、残念ながら証拠や形式が重要視されます。
たとえば、領収証がない場合、使ったことを立証することはカンタンではありません。また、決算の時点では、まだ支払っていない費用を未払金という形にして計上するのに、もし請求書がなかったら、その説明はむずかしくなるでしょう。
同じように、業務に必要な費用に関しては、社内規定に基づいた支出なのか、そうでないのかによって、その支出の信ぴょう性が疑われてしまう可能性があります。
疑われないようにするためには、形式が必要となるのです。
規定があれば「出張手当」「慶弔金」も経費申請できる
国内外を問わず、業務に出張は付き物です。たとえば、商品の買付けのため、新幹線を利用して滞在先のホテルに泊まり、戻ってきたとします。このケースでは往復の交通費も宿泊代も経費とすることが可能です。これは個人でも法人でも同じです。
しかし、法人成りした場合は、「出張手当」を支給できるようになります。この場合、「旅費規定」を作成し、出張手当の金額を明記しておくことによって、会社としては経費扱いになると同時に、もらった個人側も所得税が課税されない、非課税の収入となるので大変重宝します。もちろん、異常に高額だと論外ですけどね。
「慶弔規定」も同様です。個人事業主の場合、身内の冠婚葬祭費用はプライベートな支出としてほぼ経費として認められません。しかし、法人成りした後で、慶弔規定を整備すれば、見舞金や弔慰金、出産祝いや結婚祝いなど、プライベートな支出ですら、遠慮なく経費扱いにすることができます。
各種規定を作成するときは、多くの会社で規定されているような、役職や勤続年数などで金額に差をつけるような規定がいいでしょう。