(※写真はイメージです/PIXTA)

おひとりさま生活は、経済的にも時間的にも自由度は高いですが、老後や相続について不安を感じられる方は少なくないようです。おひとりさまの場合、相続対策を何もしなければ財産のすべてが国庫へ帰属してしまう可能性もあります。では、相続する家族がいない場合に、築きあげた資産を特定の人や団体に残し、希望通りに活用してもらう方法はあるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所の代表・萩原達也弁護士が解説します。

おひとりさまが準備するべき相続対策

築きあげてきた大切な資産を、恋人やお世話になった人に渡したい、特定の団体に寄付したいと考えていても、何も対策をしなければ国のものになってしまう可能性があります。そのため、生前にご自身の状況に適した相続対策をしっかりと行うことが大切です。

 

では、具体的にどのような対策があるのかを確認していきましょう。

 

(1)遺言書の作成

前述したように、遺産は法定相続人がいれば法定相続人に、特別縁故者がいれば特別縁故者に承継されますが、いずれも存在しない場合には、国のものになってしまいます。また、特別縁故者が財産を取得するための手続きは非常に煩雑で、大変です。そのような事態は、生前に遺言書を作成することで防げます。

 

遺言書がある場合、遺言書により指定された人が相続することができます。遺言書で指定する人は、家族や親族だけでなく、恋人やお世話になった人など第三者を指定することも可能です。

 

相続対策で利用される遺言書は、主に2種類です。

 

・自筆証書遺言

・公正証書遺言

 

家族も親族もいない場合、遺言書を誰にも見つけてもらえないというリスクがありますので、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を作成するのがおすすめです。公正証書遺言の作成には公証人が関与しますので、遺言が無効になるリスクが低く、遺言書の偽造や紛失を防ぐことができます。

 

不動産や株などを有しており、遺産額が大きくなる場合は、検討すべき事項が多岐にわたります。そのため、どのような内容の遺言書にするかは、弁護士のサポートを得ると安心です。

 

遺言の内容を実現するために、亡くなった際に弁護士が遺言執行者となるかたちでの遺言書の作成も可能ですし、遺言書(の謄本)を弁護士が預かることも対応している場合があります。

 

(2)任意後見契約の締結

亡くなった後のことではありませんが、自身の判断能力が落ちる事態に備えて、任意後見契約を締結することも考えられます。

 

任意後見契約とは、将来自分が認知症や障害などにより判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめ信頼できる第三者に将来の財産管理や身上監護を依頼することです。

 

本人の判断能力が低下したときに利用できる制度には、法定後見制度があります。しかし、法定後見制度では、後見人や後見人の権限を本人が決めることができませんので、財産管理や身上監護に自分の希望を反映させることができません。

 

法定後見制度には不安があるという場合には、元気なうちに任意後見契約の利用を検討するとよいでしょう。なお、財産管理や身上監護を託せる人が周りに誰もいないという場合には、弁護士などの専門職に任意後見人を依頼することも可能です。

 

自分の判断能力が衰えた後のことや亡くなった後のことを考えるというのは、決して簡単なことではありません。しかし、長年築きあげてきた資産を、ご自身の納得いく内容で活用してもらうためにも、終活とあわせて相続対策も考えておくことが大切です。

 

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

 

萩原 達也

ベリーベスト法律事務所

代表弁護士

 

 

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※本記事は、公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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