今回は、法人成りすれば範囲が広がる「経費」として計上できる項目を見ていきます。本連載は、税理士法人ゼニックス・コンサルティングの税理士、関根俊輔氏の著書、『個人事業を会社にするメリット・デメリットがぜんぶわかる本』(新星出版社)の中から一部を抜粋し、個人事業を法人化したときの経費面のメリットについて説明します。

「個人」と「法人」の経済活動には、決定的な違いがある

個人ではグレーゾーンで認められなかった経費も、法人成りした後は、会社の損金か否か、つまり0か100かの税務判断になります。

 

個人事業主が所得を得るために使ったお金を「必要経費」と呼びます。

 

一方、会社が所得を得るために使ったお金を、会計上「経費」と呼び、その中で法人税の計算上、差し引くことのできる経費を、法人税法上「損金」といいます(以降、「経費」「必要経費」「損金」の区別が特別に必要な場合を除き「経費」として統一)。

 

原則的に、個人だろうが、会社だろうが、事業を遂行するときに、どうしても必要なコストは当然、課税の計算上差し引くことができます。

 

しかし、個人と会社の経済活動を考えた場合、じつは決定的な違いが存在します。

 

会社の活動は、つねに株主のために利益を得ることを目的としており、それ以外の活動はありません。そのため、会社の経費は原則として、すべて事業活動のために支出されたものと見ることができます。

 

ところが、個人の活動は違います。服を買ったり、レジャーに行ったり、友だちや家族と飲みに行ったりします。こうしたプライベートな「家事関連費」部分が、事業としての支出と交じりながら一連の消費活動を行います。

仕事のための支出かどうか計算しづらい「個人の経費」

そこで所得税では、さまざまな個人の支出の中から事業に必要な経費だけを選んで、所得を計算するという形になっています。

 

そうすると、個人事業の計算方法では、経費の計算過程において、プライベートで使ったお金と、直接的な事業活動のための経費が混同して集計されるケースもあります。そのため、これらの中で、「この経費(たとえば交際費や水道光熱費)のうち、何%くらいは家事関連費だから、その部分は所得計算上の経費に算入しないでよ」という方法が採用されます。

 

厄介なのは、税務調査のときに、このような経費と家事関連費との区分計算が、そのまま認められないことも起こり得ることです。個人事業主に税務調査が入った場合、所得が思ったより多くなってしまうケースが出てきてしまうのです。

 

一方、会社は、前述したようにすべてのお金の動きが、すべて事業活動という前提がありますので、経費の範囲も自然と広がってきます。上手に利用したいところです。

 

<法人成りしたときの経費のメリット>

 

家賃

住居を役員社宅扱いにできる

 

出張手当、慶弔費

「社内規定」をしっかり作れば経費が増える

 

車両

車などの資産が全額経費になる

 

生命保険

条件を満たせば、生命保険料が経費になる

 

退職金

退職金が経費になる

 

経営セーフティ共済

経営セーフティ共済を有効活用できる

本連載は、2015年12月15日刊行の書籍『個人事業を会社にするメリット・デメリットがぜんぶわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

個人事業を会社にするメリット・ デメリットがぜんぶわかる本

個人事業を会社にするメリット・ デメリットがぜんぶわかる本

関根 俊輔

新星出版社

個人事業を法人化した際のメリットとデメリットを、図解とともに完全比較! 法人化の最大のメリットである「節税」と、最大のデメリットである「手間」の問題について詳しく解説。 メリットとデメリットを比較した結果、…

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