長女が「長男の嫁」に放ったとんでもない一言
夫婦のうち一方の死亡に伴った、配偶者と子どもによる相続を「一次相続」、そして一次相続後、配偶者の死亡に伴った子どもによる相続を「二次相続」と呼びます。どちらもしっかり対策を行わないと、泥沼の「争続」に発展しかねません。
恨みつらみはなかなか消えないもの。一次相続で納得いかない結果に終わった……義家族との間にわだかまりが残った……家族は、ずっとそのときの感情を覚えています。積年の怒りを爆発させるのが、「相続」なのです。
母が亡くなったあと、独身長女・長男の嫁・長男の子どもの間に起きた下記のトラブルは、まさに典型例といえましょう。
“母は2人の孫だけはかわいがっていましたが、独身の長女にしてみれば、それもおもしろくなかったのだと思われます。
そして、今回、母が亡くなり二次相続が発生しました。相続人は長女と、長男の代襲相続人※である孫2人です。かねてから長男の妻に不満を抱いていた長女の気持ちが、ついに爆発しました。「嫁のくせに親の面倒も見ないで、孫を取り入らせて遺産だけもらおうなんてずるい。母の面倒を最後に見たのは私なのだから、母の遺産は私がもらうのが当然でしょ。孫たちの代襲相続は放棄してもらうわ」と長男の妻に言い放ったのです。”倉持公一郎氏『ワケあり不動産の相続対策』
※ 代襲相続人・・・相続人となるはずだった兄弟姉妹がすでに亡くなっていたり、何らかの理由によって相続権を失っていたりする場合に、代わって相続人になる人のこと。今回のケースでは長男が死亡していたため、その子どもが相続権を得た。
「嫁のくせに面倒もみないで」「母の面倒を最後に見たのは私なのだから」から察するに、長女ひとりで懸命に親のお世話(介護)をしていたのでしょう。時間や費用ともに大きなウエイトを占める親の介護は相続トラブルの火種になりやすいものです。
結局、本事例は“長男の妻は長女に言われるがまま、未成年である子らに代わって、「代襲相続を放棄します」という書類にハンコを押してしまいました。”となんともツラい幕引きをしています。家族にわだかまりが残らないよう、できる限り配慮した遺言書を用意していれば……義両親の面倒をもっと見ていれば……相続のシーンでは「たられば」が尽きないものです。
とはいえ、長女の発言には穴があったことにお気づきでしょうか。カギとなるのは「遺留分」です。