(※写真はイメージです/PIXTA)

旅費交通費の内訳は、税務調査で指摘を受けやすい項目の1つです。「カラ出張」が疑われると経費として認められず、過少申告や偽装、脱税などの嫌疑がかかる可能性があります。税務調査でカラ出張を指摘されないためには、どうすればよいのでしょうか? 税理士法人松本が解説します。

税務調査で「カラ出張」を疑われる理由

税務調査でカラ出張を疑われる理由としては、以下のような点が挙げられます。

 

■旅費交通費はプライベートとの線引きが難しい

旅費交通費は原則非課税で、交通費の中には電車利用などで領収書が取得できない場合も少なくありません。規定に基づいた適正な交通費であれば、実費精算しなくてもよいこととなっているため、経費の水増しを目的に不正な旅費交通費の計上をしているケースが起こりやすくなっています。私的な旅行や移動手段として使われた交通費と業務上の理由で使う交通費を厳密に分けるのは難しいケースも多く、プライベートとの線引きが難しい場合もあります。そのため、税務調査において旅費交通費の内訳は指摘を受けやすい項目の1つともなっています。

 

■そもそも「カラ出張」とは?

税務調査で指摘される「カラ出張」とは、実際には行っていない出張にかかった交通費や宿泊費などを旅費交通費として計上することをさします。カラ出張で悪用されやすい方法としては、

 

・実際には行かない出張申請を出し、旅費や日当を経費計上する

・新幹線のチケットを予約して交通費を計上し、後日払い戻す

・予約した宿泊先をキャンセルし、宿泊費の安いホテルを利用して差額を着服する

・出張先で実際には利用していない地下鉄やバスの料金を計上する

・プライベートの旅費や宿泊費を出張費として計上する

 

などが挙げられます。

 

<旅費交通費の定義>

旅費交通費とは、業務上必要とされる場所へ出張する際にかかる交通費や宿泊費、経費などをさします。旅費交通費に該当する費用としては、

 

・電車、バス、飛行機、フェリー、タクシー代などの交通費

・社用車で出張した際の駐車場代、ガソリン代、高速代

・レンタカーを使用した場合の利用料

・宿泊費

・海外出張時のビザ、パスポート申請費用

 

などが挙げられます。旅費交通費について規定を作成していないと、高級ホテルやタクシーの頻繁な利用などの可能性も出てしまいかねません。特に、出張する従業員へ旅費の管理を任せている場合にはカラ出張の不正が起きやすく、税務調査で指摘されてはじめて発覚するケースも少なくないのです。

カラ出張を指摘されないために取るべき対策

税務調査でカラ出張を指摘されないためには、以下のような対策が重要となります。

 

●出張旅費規程を作る

⇒旅費交通費の使い方について社内規定を設けてルール化することで、高額な旅費交通費の申請、計上を防ぎ、税務調査で不透明な経費計上を疑われるリスクを避けやすくなります。旅費規程の内容については特に法律で定められていないため、適正な範囲で会社ごとに作成することが可能です。社内で作った旅費規程は、労働基準法によって就業規則として扱われます。

 

出張旅費規程を作成する際には

・規定を作成する

・社内全員へ周知する

・株主総会で決議決定する

といった流れで行います。

 

<出張旅費規程で定める主な内容>

旅費規程で定める内容としては、以下が挙げられます。

 

・出張の定義:

どこまでの移動を出張と定義するかを定めます。一般的には、宿泊をともなう場合、片道100kmを超えた場所へ移動する場合に出張と定義されます。

 

・適用範囲:

出張にともなう旅費交通費の支給を社員に限定するか、契約社員やパート、アルバイトも含まれるのかなどを定めます。

 

・出張手当と宿泊費:

出張時に支給される手当と宿泊費を定めます。産労総合研究所が2019年6月に行った調査によると、宿泊出張時手当の平均額は部長職が2,900円、一般社員が2,355円となっていました。宿泊費については部長職クラスで9,835円、一般社員で8,605円となっています。

 

※参照元:産労総合研究所『2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査』(https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/shanaiseido/shuccho/pr2007-2.html)

 

・グリーン車、座席等級など:

新幹線を予約する際にグリーン車料金を認めるか、飛行機の座席にビジネスクラス使用を認めるか、フェリー乗船時の座席クラスなどについて定めます。なお、産労総合研究所のデータでは、新幹線のグリーン車使用は「都度判断する」を含め、部長職クラスでの使用を認めているケースが18.1%となっていました。

 

・出張先での経費をどこまで認めるか:

出張先でかかる交通費、宿泊費以外の経費について定めます。社員の飲食代などを福利厚生費として認めるかどうかなどが挙げられます。この他にも、出張の申請方法や出張費の仮払い手続き、費用の明細提出方法などについて定めます。

出張旅費規程を作成する際のポイント

出張旅費規程を作成する際のポイントについて解説します。

 

●適正な金額を定める

⇒宿泊費や出張手当に関する規定を作る際は、適正な範囲で定めるようにしましょう。相場よりも大きく相違した金額や、多額の出張費を設定すると、税務調査で経費の水増しを疑われる可能性が高まります。適用には一定のルールを決めて社員全員に周知し、申請方法や精算方法を継続して守ってもらうようにします。

 

●定期的に見直しを行う

⇒出張手当や宿泊費、その他諸経費などの平均額については、地域によって差があったり、物価の変化によって異なってきたりするケースもあります。定期的に見直しを実施し、必要に応じて都度適正額を規定し直すようにしましょう。

 

●領収書や明細などの資料は必ず保存する

⇒タクシー代や新幹線のチケット代、宿泊費や現地での経費など、領収書や控えが取得できるものについては必ず提出してもらい、ファイリングして管理するようにします。出張先にある取引先の会社概要や商談時に入手した名刺、出張する必要があることを証明する企画書なども資料として保存しておくとよいでしょう。

 

●税理士に相談する

⇒出張旅費規程の作成方法で迷った場合や、税務調査で指摘されない管理方法について知りたい場合は、税理士などのプロへ依頼するのも1つの方法です。

税務調査ではきちんと説明できるようにしておくことが大切

税務調査では旅費交通費についてチェックされることが多く、カラ出張を疑われると経費として認められず、過少申告や偽装、脱税などを疑われる原因になる可能性があります。

 

旅費交通費は実費精算でなくてもよく、プライベートな利用や高額な宿泊費、チケットなどを計上できるケースもあるため、出張旅費規程を定めて税務調査で適正に計上していることを説明できるようにしておくことが大切となります。

 

出張旅費規程の適正な作り方に少しでも不安がある場合や、税務調査で指摘されないための改善点などについて知りたい場合は、1人で悩まずに実績豊富な税理士などの専門家へ依頼する方法も検討してみるとよいでしょう。

 

 

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

 

税理士法人松本

税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。

 

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