(画像はイメージです/PIXTA)

空いた実家は売るよりそのまま貸す方がオススメなのだと、不動産投資家で空き家再生コンサルタントの吉原泰典氏は言います。一体、なぜなのでしょうか? ご紹介していきます。※本連載は、吉原泰典氏による著書『「空いた実家」は、そのまま貸しなさい』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・再編集したものです。

売却には税金の優遇措置があるが、使いにくい

先ほども触れましたが、空き家の売却を勧める話でよく挙げられる理由が、「譲渡所得の3,000万円特別控除」を利用できるということです。

 

相続した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、亡くなった人(被相続人)が居住用に使っていた建物を相続した相続人が、その建物(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限る)と土地、または建物を取り壊した後の土地を譲渡した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できます。

 

例えば、相続した実家(空き家)を1,000万円で売却できたとしましょう。

 

昭和の木造戸建てであれば建築費や購入価格が不明ということも多く、取得費は簡易計算で譲渡価格の5%(50万円)です。さらに売却にかかった費用として仲介手数料(36万円+消費税)などを差し引きます。ここではざっくり譲渡所得が900万円になるとします。

 

通常はここに長期譲渡所得(亡くなった人の取得日を引き継ぐので所有期間5年超)として20.315%の所得税・住民税が約183万円かかります。これに対して「譲渡所得の3,000万円特別控除」が適用されれば所得税・住民税はゼロとなり、約183万円分の得をするというわけです。

 

しかし、この特例にはいろいろな要件があり、特に建物とともに売却する場合には現在の建築基準法の定める耐震基準(いわゆる新耐震基準)をクリアするように耐震リフォームを行う必要があります。

 

先ほどのNHKの番組もそうでしたが、昭和の木造戸建てで耐震リフォームをするには耐震診断、耐震設計、そして耐震工事が必要となり、手間もコストもかなりかかります。

 

この特例を利用するなら基本的には建物を取り壊して更地にしてからではないかと思いますが、その場合は建物の解体撤去が必要で、木造2階建てでも200万円前後はするはずです。

 

また、この特例は相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限が設けられており、相続人が複数いて共有になっていると意見がまとまらないことも考えられます。

 

そもそも、税金の優遇措置があるから急いで実家を売却するということでいいのでしょうか。ちなみに、「税金で得する」というのは不動産投資を巡るこれまでの数々のトラブルに共通してみられる鉄板の営業トークです。ほかにも選択肢はいろいろあります。

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「空いた実家」は、そのまま貸しなさい

「空いた実家」は、そのまま貸しなさい

吉原 泰典

ダイヤモンド社

株やFX、ワンルーム投資よりも「実家」の活用が先! 古い実家は、月5〜20万円を生むお宝です! 「効率的な実家の片づけ」から始まり、「不動産としての実家の価値の見積もり」「不動産としての価値を高める魅力的なリフォー…

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