(※写真はイメージです/PIXTA)

共働き夫婦の場合、老齢厚生年金として年金の2階建て部分が2人分受け取れることになります。夫婦のどちらかが専業主婦(夫)の場合の家庭と比較して、老後に多くの年金を受け取れる可能性が高いでしょう。しかし、共働きならではの注意点もあって……。本記事ではSさんの事例とともに、共働き夫婦の老後の注意点について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子FPが解説します。

(4)夫婦関係の悪化

共働き夫婦は、それぞれが、現役時代キャリアを積んで頑張ってきているでしょう。それなりのプライドもあるかもしれません。こうした場合、定年後、一緒にいる時間が多くなると、こんなはずじゃなかったと思うことが出てくることは自然です。

 

定年後の夫婦関係の悪化はコミュニケーションをとることで、多くの場合、解決するかもしれません。それも早い段階からの心がけが重要になります。これは前述の(1)(2)にもつながってきますが、財布を一つにすることで、お金に関するコミュニケーションをとることが可能になります。

 

また、もしくはお互いが割り切ってやりたいことをやるという夫婦もあるでしょう。ただし、一緒にいる夫婦である必要がないと結論が出た場合には、「卒婚」という選択肢もあり得るのです。

 

Sさん夫婦の場合、現役時代はお互い働いていたため、家事の分担もできて、お互いの考え方を認め合って生活を続けてきました。そのほうが居心地がよかったようです。

定年記念の旅行を機に事態はまさかの方向へ…

60歳の定年を機に、労いの旅行へ行くことにしました。これからのセカンドライフをどのように過ごすのかも話し合ういい機会でした。

 

ですが、話し合いは思わぬ方向へ進むことに……。

 

夫の考えは、コーヒー好きの2人だから、ゆっくりと喫茶店経営をしてみたい。いままで別々に頑張ってきたが、セカンドライフは一緒に過ごしたいとのことです。

 

一方、妻の考えは、これまでの会社で継続雇用で働きたい。職場は若い世代も多く、刺激になる。いままでどおりお互いのやりたいように過ごしたいといってます。

 

どうやらお互いの考えは違う方向に向いているようです。話し合いを重ねても考えは変わらず、だんだんと険悪ムードに進みます。会社員という同じ立場でいたときには、認め合っていた夫婦でしたが、いざ人生の分岐点を迎え、考え方が違うことがわかると、お互いの主張を変えることができなくなり、お互い違う道を歩もうということをいいだす始末。結果、定年の労い旅行のはずが、卒婚旅行となってしまいました。

 

夫は妻と一緒に過ごす時間を求めていたこと、喫茶店経営に中古の一戸建て購入から考えていたため、貯蓄は退職金と合わせて3,500万円用意していました。老後資金を考えると、多少なり妻の貯蓄を期待していましたが、卒婚となると、喫茶店経営も夢と消え、がっくりと肩を落とすことに。

 

一方、妻の性格上、卒婚するといままで以上に家賃と食費がかさみ、生計維持が難しくなりそうです。実は、妻はあればあるだけお金を使う散財する傾向があり、貯蓄は退職金程度で500万円と、ほとんどできていませんでした。

 

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