(※写真はイメージです/PIXTA)

共働き夫婦の場合、老齢厚生年金として年金の2階建て部分が2人分受け取れることになります。夫婦のどちらかが専業主婦(夫)の場合の家庭と比較して、老後に多くの年金を受け取れる可能性が高いでしょう。しかし、共働きならではの注意点もあって……。本記事ではSさんの事例とともに、共働き夫婦の老後の注意点について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子FPが解説します。

元共働きの夫婦、年金は月33万円

同級生のSさん夫婦は、共働きです。お互い大学卒業後、一般企業で60歳まで仕事を続けたため、直近のねんきん定期便の見込額では、夫婦が65歳から受け取れる年金額は約400万円、月額は約33万円です。これまで必死で働いてきた2人は、この見込み額に手を取り合って喜び合います。

 

出所:筆者作成
[図表]Sさん夫婦の年金見込み額 出所:筆者作成

 

※老齢基礎年金は2024年度新規裁定者の満額。老齢厚生年金は差額加算を考慮せず。Sさんの平均標準報酬月額は50万円、450月、妻の平均標準報酬月額は47万円、450月で計算。

 

結婚当初から、お互いの給与は過度に干渉することなく、共有している日常生活費と家賃を1つの金融機関口座にお互いが20万円ずつ振り込み、光熱費等を支払うようにしてきました。Sさんの自宅マンションは都内の通勤に便利なところにあるため、家賃は20万円です。Sさんには全国転勤の可能性があったため、ついに定年まで持ち家を購入する決断には至りませんでした。

 

2023年(令和5年)総務省統計局の家計調査報告(家計収支編)平均結果の概要から勤労者世帯2人以上の世帯(60歳以上)で、実収入は47万8,099円、消費支出は30万7,321円です。また、65歳以上の無職世帯の実収入は25万5,973円、消費支出は25万2,928円となっています。

 

上記より、年金に関してSさん夫婦は平均以上の収入があり、いわゆる「勝ち組夫婦」といえます。では、前述の勝ち組夫婦でも老後破産に陥るケースにあてはめてみるとどうでしょうか。

 

(1)現役時代から生活水準が落とせない

お互いの給与は過度に干渉することなく過ごしてきたSさん夫婦では共有費以外の給与をお互いがなにに使っているか、まったく理解していないため、貯蓄がどの程度あるかが問題となります。

 

お互いがなににどのくらい使っているのかわからない夫婦は所得があったとしても「相手が貯めているだろう」と考えがちです。そのため、案外貯まっていないケースも多いのです。

 

(2)定年退職後の起業に失敗

セカンドライフにやりたかった職業にチャレンジしようと、退職金や貯蓄をあて、起業し失敗することも少なくありません。チャレンジする前に、下調べをして、夫婦でしっかりと考えのすり合わせをしてからでないと、こんなはずでは……と破産の可能性があります。

 

Sさんのケースでは、Sさんは妻に内緒で秘かに起業を考えていました。持ち家を持たなかった理由は転勤の可能性が一番の理由でしたが、起業の際、セカンドライフは都内近郊に自宅を中古で購入し、喫茶店経営のリフォームを、とも考えていたのです。

 

(3)子や孫への多額の援助

Sさん夫婦には子どもが1人、孫が2人います。過度な援助は自分たちの生活が脅かされることもあります。援助を求められたときは、子どもとよく話し合い、お金を出すだけでなく、相談に乗る必要があります。

 

Sさんの子どもたちは、安定した公務員のため、現状では問題ないようです。

 

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