セ・リーグ「好きな球団ランキング」と「日銀短観」の“不思議な一致”【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2024年4月22日)

セ・リーグ「好きな球団ランキング」と「日銀短観」の“不思議な一致”【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

セ・リーグ人気球団ランキングと、日銀短観12月調査における優勝チーム別「大企業・全産業・業況判断DI・前年差変化幅の平均順位」には、不思議な一致が見られるといいます。本稿にて見ていきましょう。※本連載は宅森昭吉氏(景気探検家・エコノミスト)の『note』を転載・再編集したものです。

「見るのが好きなスポーツ」第1位はプロ野球

日本人の好きな見るスポーツの1位は、国民の半数近くが好きなプロ野球です。2024年・読売新聞のスポーツ世論調査(調査期間:2月6日~3月14日)の好きな見るスポーツ・ランキング(複数回答可)の第1位はプロ野球で45%と高い支持率となりました。2023年・読売新聞の世論調査(調査期間:1月24日~2月28日)での好きな見るスポーツ・ランキングの第1位は同じくプロ野球でしたが、支持率は39%でした。

 

昨年WBCで大谷翔平選手らの活躍で日本が優勝したことをきっかけに、野球熱が高まったようで、大リーグが24年は30%で23年から11ポイント上昇しました。また、高校野球も24年は40%で23年から3ポイント上昇しました。

 

[図表1]読売新聞スポーツ世論調査:好きな見るスポーツ・ランキング

好きな球団:1位は巨人、2位は阪神、3位は中日とソフトバンク

24年調査でプロ野球チームの中で好きなチームは、第1位が巨人(15%)でした。質問が定例化した92年以来33年連続第1位となりましたが、昨年より2ポイント低下しました。第2位は阪神(10%)です、昨年「アレのアレ」を達成したことで2ポイント上昇しました。第3位には中日(4%)とソフトバンク(4%)が並んで入りました。「興味はあるが好きなチームはない」が20%で、「興味がない」が27%でした。

 

好きな球団の優勝は、ファンの消費マインドを高めるなどの効果があります。人気球団の場合、他の球団に比べファンの数が多いので、その影響力も大きいと思われます。

 

[図表2]読売新聞スポーツ世論調査:野球チームの中で好きなチーム

セ順位TOP3は「阪神・中日・巨人」。人気3球団が勝率5割台

中日は4月17日セ・リーグ10勝一番乗りを果たしました。15年4月14日以来9年ぶり、実に3291日ぶりの一番乗りでした。セ・リーグで前年最下位球団の10勝一番乗りは02年の阪神以来22年ぶりです。中日は4月3日から17日まで2失点以下を12試合連続達成しました。日刊スポーツによると、過去12試合連続2失点以下を達成したのは、今回で5回目。中日としては10年9月1日から14日までに続く球団タイ記録になりました。

 

連続2失点以下の記録は1リーグ時代の巨人の43年5月1日から6月1日までの15試合が最長です。13試合連続は41年7月29日から8月25日の阪急と、2リーグ制後最長となっている56年6月24日から7月14日の阪神の2球団です。

 

しかし、中日は18日から21日まで4連敗で0.5ゲーム差の2位に後退しました。代わって4月21日に首位に立ったのは、引き分けを挟み6連勝と追い上げてきた、昨年のセ・リーグ優勝・日本一チームの阪神です。巨人は中日に0.5ゲーム差の3位につけています。今年はどの球団も競り合っている状況で、ペナントレースの先行きが楽しみですが、足元は人気3球団が勝率5割台で上位3球団に入っています。他の3球団の勝率は4割台にとどまっています。

セ・リーグ人気ランキングと日銀短観の“不思議な一致”

現在首位の、阪神タイガース優勝年は、実質GDP成長率と高い関係があるようです。高度経済成長期が終わる第1次石油危機が発生した1973年以降2023年までの51年間での実質GDP成長率の暦年成長率の単純平均は+2.07%でした。阪神タイガース優勝が優勝した1985年、2003年、2005年、2023年の暦年・実質成長率の4回の平均は+2.60%で51年間の平均を上回っています。

 

1973年以降2023年までの51年間で、その年のセ・リーグの優勝チームが決まった直後の調査である、日銀短観・大企業・全産業・業況判断DI・12月調査の前年差変化幅の平均は▲0.0ポイントです。人気球団の巨人の優勝年では改善9回・不変1回、悪化10回ですが、前年差変化幅の平均は+5.7ポイントの改善です。人気2位の阪神の優勝年では改善が3回・悪化が1回ですが、前年差変化幅の平均は+3.3ポイントと改善です。中日の優勝年では改善が5回・悪化が3回ですが、平均は+0.3ポイントと僅かな改善になります。

 

残る3球団の優勝年の平均は各々、悪化です。広島の優勝年では改善が3回・悪化が6回で平均は▲3.7ポイントの悪化、ヤクルトの優勝年では改善が4回・悪化が5回で平均は▲7.0ポイントの悪化、DeNA(横浜)の優勝年は悪化が1回で▲34ポイントの悪化になります。

 

セ・リーグの人気ランキングと各チームの優勝年の日銀短観・大企業・全産業・業況判断DI・12月調査の前年差変化幅の平均の順位は、概ね一致しています。

 

なお、一番人気の球団である、巨人が日本一になった年の平均は+11.3ポイントと2ケタの改善。人気があった長嶋茂雄監督で日本一になった94年と2000年は平均+23.0ポイントと大きく改善しています。

 

[図表3]最近51年間の日銀短観 大企業全産業業況判断DI変化幅(12月調査の前年差)と巨人・阪神の優勝

「中日が優勝した年or翌年」には政変が起こるというジンクス

なお、中日が優勝した年(下剋上で日本一になった年を含む)、または翌年には、政変が起こるというジンクスがあります。

 

[図表4]中日ドラゴンズが優勝した年、または翌年と政変

 

※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

 

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