消費者マインドアンケート調査は“最も身近な経済指標”のひとつ
内閣府「消費者マインドアンケート調査」(試行)は16年9月から実施されている、回答を希望する人が誰でも回答できるユニークな調査です。最も身近な経済指標のひとつと言えそうです。月により回答数が異なり、振れを伴う面はありますが、調査は毎月20日が締め切りで、結果の公表時期が当該月の22日~24日頃と早く、消費者マインドの基調の変化を的確に把握することができます。
質問数は「暮らし向き」と「物価見通し」の2問だけとシンプルです。例えば「暮らし向き」の質問は、「良くなる」「やや良くなる」「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」の5つの選択肢から回答します。景気ウォッチャー調査と同じ5段階での評価なので、同調査と同様に、1.0から0.0まで、0.25刻みでの点数を割り振り、加重平均して50が判断の分岐点となるDIを算出することができます。
24年4月調査結果では、物価の先行き見通しにやや「頭打ち感」
24年4月の「消費者マインドアンケート調査」で物価の先行き見通しに幾分頭打ち感が出てきました。「上昇する」の割合が37.7%で、ロシアがウクライナ侵攻した22年2月24日より前の調査である22年1月の36.0%以来の30%台と落ち着いた水準です。また今年2月調査で「やや上昇する」割合が「上昇する」を、ロシアがウクライナ侵攻した22年2月24日直前の調査である22年2月以来初めて上回りました。その後、今回4月調査まで、3ヵ月連続して上回っています。22年3月から24年1月の23ヵ月間は、「上昇する」の割合が「やや上昇する」を上回っており、世界的なエネルギーや穀物価格の上昇が意識され、物価は上昇するとみる見通しがかなり強かったことがわかります。
物価見通し判断DIは「22年1月の水準」を上回る
但し、24年4月物価見通し判断DIは88.6で、22年1月以降2年4ヵ月間の平均92.9を4.3ポイント下回るものの、22年1月の85.0を上回っています。また、「上昇する」と「やや上昇する」を合計した割合は81.3%で、22年1月の79.5%を上回っています。
最近の34年ぶりの円安傾向に加え、中東情勢緊迫化で原油価格の先行きが不透明なことが影響しています。また、政府の電気代や都市ガス代の消費者負担を軽減することを目的とした電気・ガス価格激変緩和対策事業による値引き期間が24年4月使用分まで、激変緩和幅縮小の対応を含めても5月使用分までで、それ以降は値引きがなくなる分、電気・ガス価格の上昇要因になることが見込まれていることが影響していそうです。
全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年同月比は2%台
こうした動きは、全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)前年同月比は、0.0%台は22年3月の+0.8%が最後で、その後上昇し、22年4月から8月が+2%台、9月から11月が+3.0%台、12月+4.0%のあと、23年1月に+4.2%とピークをつけたあと、2月から8月が+3%台、9月から12月が+2%台。24年は1月+2.0%、2月+2.8%、3月+2.6%と推移しています。
4月ESPフォーキャスト調査の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)・前年同期比の予測値平均は、24年4~6月期+2.54%(高位8人+2.88%―低位8人+2.21%)、7~9月期+2.61%(同+3.15%―+2.11%)、10~12月期+2.28%(同+2.85%―+1.84%)、25年1~3月期+2.20%(同+2.73%―+1.74%)、となっています。足元、前年比でみた過度な物価上昇はおさまっていますが、当面2%台での推移が見込まれ、かつての+0%台まで戻ることはなさそう状況であることは、物価見通し判断DIと似たような動きだと思われます。
暮らし向き判断DIは「18年7月以来の水準」に持ち直し
暮らし向き判断DIの16年9月からの24年4月の全調査期間の平均の36.8、最高は17年1月の48.9、最低はコロナ禍の20年4月20.7になります。24年は1月32.7、2月31.5の後、3月40.0、4月43.4と2ヵ月連続上昇しています。43.4は18年7月の43.7以来、5年9ヵ月ぶりの水準です。
なお、類似データの「消費動向調査」の消費者態度指数は24年3月に6ヵ月連続上昇して39.5まで上昇し、19年5月の39.7以来、4年10ヵ月ぶりの水準になっています。
ウクライナ情勢が物価面などを通じて暮らし向き判断の悪材料になった最初の1年間の22年3月から23年2月までの暮らし向き判断DIの平均は29.9でした。その後の物価判断の改善が、暮らし向き判断の改善に結びついた面もあったとみられ、1年間の23年3月から24年2月までの平均は31.7とやや持ち直しました。
24年3月と4月の平均は41.7まで改善しました。24年2月の実質賃金・前年同月比が▲1.8%と23ヵ月連続で減少し、消費者マインドの足を引っ張っている状況ですが、4月のESPフォーキャスト調査によると、36人の回答者中32人が24年10~12月までに実質賃金が前年比プラスになると予測しています。先行きの実質賃金・前年比プラス化などの動きが、暮らし向き判断のさらなる改善に結びつくまで期待したい局面です。
※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。