「投資が当たり前の時代」は来るのか
いまだに現金主義が根強い日本。野村アセットマネジメントが全国20~69歳の1万664人に行った『金融教育に関する意識調査2023』(2023年3月実施)では、「投資をしている」と答えた人は27%という結果でした。また、投資をしていない人が投資を始める条件として、「絶対に損をしなければ」が29%、「給料・所得が増えたら」が24%と続き、「どんなことがあっても投資はしない」という回答も31%に上っています。
国が「貯蓄から投資へ」を掲げ、新NISAもスタートしたことで、投資をする人の数は増えていくことが予想されますが、これから先、大人はもちろんのこと「のむよーぐると」さんのように学生でも「投資をするのは常識」という時代になっていくのでしょうか。経済アナリストの森永康平氏に伺いました。
――日本人にとっての「投資」の現在地を教えてください。
森永氏:日本人が投資に目を向けることになった1つのきっかけは、2019年6月に話題になった「老後2,000万円問題」です。それまでは漠然と「定年まで働けば老後生活は大丈夫だろう」と考えていたところに、年金だけじゃ足りないという情報が広まって、急に不安になりだした。そこで一部の人は投資を始めたんです。
さらに今年から新NISAが始まって、一気に投資熱が高まっています。新NISAが始まった1月に日本株がすごく強かったことも追い風になりました。そして何より、この30年ずっとデフレだったのに、2023年ぐらいから物価が上がりだしたのが大きいです。
デフレ下では「Cash is King」で、現金で持っていても勝手に価値が上がっていきますが、インフレだと物価が上昇した分現金の価値が下がってしまいます。まだインフレが定着するところまではいっていませんが、お金を減らさないために投資が必要になりつつあるというのが、現時点までの流れです。
――この先、投資が当たり前という時代になっていくと思われますか?
森永氏:やはりカギになるのはインフレの動向です。インフレが定着すれば、運用次第でお金が増やせる投資をする人は増えていくと思います。周囲にやっている人が増えれば「自分も」と続く人も多くなりますしね。
私と同世代(30代)の人などは、まだまだ投資が身近とはいえなくて、投資をしていることに特別感がある。でも今から10年ぐらいたったら、「保険に入るのと同じように投資をしている」というような感覚になっているかもしれません。
つまり、普通のことだからあえて言うことでもない、当たり前のことになっている可能性はあるでしょう。そこまで身近になれば、学生で投資を始める人も今よりは当然増えていくと思います。
また、今は「オールカントリーやS&P500を選んでおけばOK」というように、投資の方法がパッケージ化されている感じがあります。それが投資を身近にしているところもありますが、積立投資ではなく個別銘柄を選ぶ人が増えるなど、投資の方法も枝分かれしていくだろうと思います。