ワンルームのタワマン、買って大満足の40代自称パワーカップル
生まれついての資産家や、ビジネスの成功者、あるいは高所得のサラリーマンが多く暮らす、タワーマンション。利便性の高いエリアにそびえ立ち、高層階から見える眺望は最高。
夕暮れ時には高級デパートの袋を下げた身なりのいい人々が、ひっきりなしにエレベータへと吸い込まれていく。
40代の佐藤さん夫婦(仮名)は、高級スーパーのグレーのポリ袋を下げ、都内のあるタワマンのエレベータに颯爽と乗り込んだ。佐藤さん夫婦が帰宅する先は、ワンルームで家賃16万円(管理費込み)の16階だ。
結婚して、世帯収入が上がったタイミングで、タワマンに住み始めるカップルは珍しくない。佐藤さん夫婦もそうだった。きっかけは妻の「私たちだって、パワーカップルみたいなものじゃない?」のひとこと。
夫は年収550万円、妻は350万円。合計で1,000万円には届かないが、「100万円は誤差みたいなもの」と妻は余裕の笑み。
2人が暮らす部屋は単身用の10畳のワンルームだが、子どもをもつ予定のない二人には十分なのだという。
「私たち、アプリで出会いました。タワマン好きが共通点でした。すっごく快適です! 場所もいいし、ごみ捨ても楽だし、静かだし」
佐藤さん夫婦は、結婚後しばらくは賃貸で暮らしていたが、同じ階の同じタイプの部屋が売りに出されているのを見つけ、そちらを購入することにしたという。
「やっぱりオーナーになりたい。このタワマンは、本当に掘り出し物でした」
妻の言葉に、夫は深くうなずく。
「2人で夜景を眺めながら飲むシャンパンは、最高です」
10畳の部屋にダブルベッドとソファセットを置くと、体を横にしなければ移動できないが、佐藤さんは満足そうだ。
賃貸派と持家派、論争の決着はつかないが…
タワマンといっても、部屋の種類は様々だ。複数のベッドルームがある広々とした部屋もあれば、単身者向けの部屋もあり、タワマンに憧れて賃貸に入居する若者もいる。同様に、佐藤さん夫婦のように購入に踏み切る家族もいる。
しかし、不動産は「持ち家がいいか、それとも賃貸がいいか」という、決着のつかない議論がある。
家賃を支払い続けても自分の所有物にならず、高齢になってから住まい探しに困るリスクがあると主張する「持ち家派」もいるが、一方で、高額なローンを背負って家を購入しても、同時並行で10年ごとに修繕が必要になるうえ、返済がすんだころには老朽化して不動産の価値を失ってしまう、なにより家を持つと身軽に動けなくなる、と危惧する「賃貸派」もいる。
持家派にも賃貸派にもそれぞれ言い分があり、いまなお結論が出ない論争だ。
60代夫婦「タワマン生活にウンザリ」なワケ
上述の佐藤さんはタワマン購入に大満足しているが、買って後悔している人もいる。
60代の鈴木さん夫婦(仮名)は、50代で中古のタワマンを購入したが、その後しばらくして、大規模修繕工事が始まった。
「延々とやっていて、いつ終わるのかもわかりません。1年ぐらい、外の景色を見ていないかも。眺望が魅力で買ったのに、これでは意味がないですよね」
眺望も重要だろうが、大規模修繕工事の金銭負担はかなり大きい。国土交通省『令和3年度 マンション大規模修繕工事に関する実態調査』によると、タワーマンションの大規模修繕では大規模修繕工事の1戸あたりの負担額は、「100万円~125万円」27.0%、「75万円~100万円」24.7%、「125万円~150万円」17.4%となっている。
大規模修繕は1回やって終了ではない。その後も定期的に行う必要があるが、修繕積立金が順調に貯められるのか、住民が納得できる金額を維持できるのか、といった懸念が付きまとう。明確なのは、老朽化が進めば修繕費用も必然的に高くなるということだ。臨時徴収金について住民同士の合意ができればいが、金額が上がれば、簡単ではないだろう。
タワマンは確かに魅力的だが、終の棲家にする場合は、自身の資金力、年齢、そしてタワマンの築年数、修繕積立金の状況等、すべてをトータルで考えることが重要だろう。
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