税務署が目を光らせている「親子間での高額な送金」
しかし、多額の金銭や財産が動くとなると話は別です。高級車代だといって子ども名義の預金口座に多額の現金を振り込んだり、土地建物の名義を変更したといった場合は、贈与税の対象となります。こうしたケースは、上記の「通常認められるもの」の範囲から外れてしまうからです。
今回、Aさんが税務署から指摘を受けることになったのは、高級老人ホームの一時金が“必要に迫られたもの”というよりは、たとえるなら「高級マンションを購入してプレゼントしたもの」と同一視されたためであると考えられます。
金額によって「非課税」「課税」が分かれる?…実際の判例
実際に、Aさんのように「老人ホームの入居一時金」については、裁判でも争われた事例があります。
【事例】国税不服審判所の裁決
<裁決事例1>平成22年11月19日裁決
入居一時金:945万円
・自宅での介護が困難、地味な施設(認定上)
・入院と同視できるとして贈与税は非課税
<裁決事例2>平成23年6月10日裁決
入居一時金:1億3,370万円
・施設には、ジムやプールといった施設あり
・社会通念上、生活に必要な住居の費用ではないとして贈与税は課税
事例1については、自宅での介護が困難であること・施設の金額が高額でなかったために贈与税はかかりませんでしたが、今回のAさんの事例と似ている事例2については、「社会通念上生活に必要な費用ではない」として贈与税が課税されるという判決が出ています。
富裕層をターゲットにした“ハイクラスな老人ホーム”が増加
高齢化が進むにつれ、老人ホームなどの高齢者施設の数は近年ますます増加してきています。
また、各施設のサービスの種類も多様化が進んでおり、有料老人ホームやシニア向け分譲マンション、ケアハウスといった「介護認定なしでも入所できる」施設が増えているのも特徴的です。
どのような事情であっても、施設に入る際に必要となるのが「入居一時金」です。高級な施設の場合、一時金が非常に高額に設定されているケースも少なくありません。
ひと昔前であれば、自宅で子ども世帯と一緒に暮らして介護をしてもらうのが一般的でしたが、いまは時代が変わっています。「子どもの世話になり肩身の狭い思いをするのであれば、お金を使って好きに暮らせる老人ホームのほうがよい」と考える方が増えているのです。
特に富裕層をターゲットにしたハイクラスな老人ホームは、建設前から予約で埋まるなど注目を浴びており、入居を開始する年代も若くなってきています。
「高額な金銭の移動」には要注意
ますます高齢化が進み、富裕層向けの高級老人ホームの需要も増えています。
必要最低限の施設であれば問題になる可能性は低いですが、今回のケースのように高級老人ホームの高額な入居一時金を本人以外が支払った場合、贈与税の対象となる場合があるためご注意ください。
なお、子どもが親のために支払う場合はもちろん、妻の入居費用を夫が支払うようなケースでも注意が必要です。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
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