「面倒を看たのは私…」身勝手な弟に悩む、55歳姉の相続対策
石川由紀(仮名)は、父の闘病時において献身的なサポートを行った。3年前(現在からは8年前)に夫の問題で離婚し心身ともに疲れ果てていた際に、父親が支えてくれたことに対する恩返しと考えていた。
父親は小さいころから由紀をとても可愛がっていた。父は結婚に反対していたが、押し切る形で入籍し子供も誕生した。結果としては父の見立てどおりとなってしまったが、離婚した際には理解を示してく暖かく迎え入れてくれた。
父の病気が見つかってからの1年半は、娘が学校に行っているあいだなど時間があれば看病に出向き、父の快復を必死でサポートした。しかし、願いも虚しく父親は力尽き5年前に相続が発生した。
相続が発生すると弟が我が物顔で資産の配分を決めていった。当時、取引銀行の支店長や担当が義博のところに足しげく通っていたようであり、私と会っても軽く会釈するのみである一方で、弟に対しては平身低頭し、まるで将軍かお殿様に謁見するかのようで明確な態度の差を感じた。
おそらく、銀行も承継にあたって弟に対してはいろいろと助言をしていたと思う。
また、父親の闘病時においても弟や弟の妻はほとんど来ることがなかった。何度か「見舞いに行ったら」と声をかけたが、「俺も妻も仕事などで忙しいから無理だ」の一点張りであり、さらに「姉は時間が自由でいいよな」「渋谷家のことを考えるのは俺だけで、姉は気楽でいいよ」など身勝手な発言も目立った。
由紀は相続に対する知識もなく、弟が主体となって決めていくことに特段の疑問は感じなかったが、弟が承継した資産と比べると相続した2,000万円は明らかに少ないと感じていたし、弟らは親のためにはなにもしないくせに明らかに自分を見下すような態度にも不満を募らせていた。
父の死後、日常生活を取り戻し娘も高校受験を終え希望する私立高校に進学したころ、現夫と同窓会で再会した。
その後、何度か個別でも食事をするようになり、父親の相続のときの話も相談してみた。現夫は行政書士の資格を有しており、相続業務にも多く携わっていることからいろいろと教えてもらっていた。由紀自身も本を購入して勉強するなど、相続の仕組みや税務に対する知識を深めていた。
最近の弟の行動をみると、母の相続において自分に有利なように準備していこうという魂胆が見え見えである。父の相続の際には知識が乏しく、弟にとっていい形としてしまったが母の相続の際には一歩も譲るつもりはない。
最近では、母親も80代となり心身が弱ってきているが結局のところ母の通院や身の回りの世話などは、父のときと変わらずにすべてこちらが看ている。現夫も、協力的であり時間があるときは車を出して母の送迎なども対応してくれている。
一方、弟夫婦は我関せずであり協力を仰いでも「忙しい」というだけで感謝の言葉もない。
母からは、日ごろの私たちの対応について少しでも報いたいと考えてくれており、何度か断ったが、最終的には娘の学費など援助してもらうことにした。
本稿執筆者が特別登壇!>>11/13開催
『元メガバンカー×不動産鑑定士が教える
「地主」のための相続対策』出版記念セミナー