普及を強く後押しした「商店街同士の結びつき」
前回の続きです。
行政との連携がうまくいっているのも、プレミアム付き商品券の3分の1もの量をポイントで発行できたのも、前身の制度であるJOYポイントが地域に根付いたことが大きな要因といえるでしょう。
しかし、JOYポイント制度も一朝一夕でできたわけではありません。
玉山さんによると、30年くらい前までは市内にはしっかりした商店街組織がなく、売り出しやセールのようなイベントも店舗ごとに行われていました。単発的な集客効果しか生まれず、地域コミュニティの拠点という役割も特になく、商店街は住民がただ食料品、日用品などを買う場という位置付けだったとのことです。
そのような状況を変えるために、まずはいくつかの商店が集まって組織として活動をスタートします。商店街としてセールを行ったり、お祭りを開催して人を集めるといった活動です。その積み重ねから商店街ごとに連合会が生まれ、複数の商店街で共通して使えるポイント制度ができます。最初はスタンプを使った簡素なものでした。その後、リライト式の磁気カードを使うようになり、JOYポイントとして普及していったわけです。
活動の核となった商店街の「前向きな想い」
個別の商店が組織になり、商店街同士が結びついていった背景には、店主たちの「地域をこうしたい」「こう変えたい」という想いがあったと思います。それが店同士、商店街同士で共有され、ポイント制度を作るといった活動の核になったのではないでしょうか。
また、この想いは、地域の衰退や人口消滅を食い止めないといけない、現状をどうにかしなければならないという後ろ向きなものではなく、成長や発展を思い描く前向きなものです。地域通貨のような新しい取り組みをスタートする場合も、この前向きさが大切だと思います。
新たな会員店舗を増やす際も、新しい参加者(煙突)に連携を呼びかける際も、こういう地域にしよう、こんな風に変えていこうという夢やヴィジョンが相手の気持ちを動かすでしょうし、そのような夢やグランドデザインを構想できる人がリーダーとして地域全体を良い方向に動かしていけるのだと思います。