意のある若者は重税国家から出て行く
中国の諺(ことわざ)に、「苛政(かせい)は虎(とら)よりも猛(もう)なり」というのがある。これは、重税を課す過酷な政治は人を食う虎よりも恐ろしいということだ。
泰山(たいざん)の近くを通りかかった孔子(こうし)は、墓に向かって泣いている婦人を見つけ、弟子の子貢(しこう)を使わせて、なぜ泣いているのかと尋ねさせた。その婦人はこう言った。
「私の舅(しゅうと)は昔、虎に殺されました。夫も虎に殺されました。息子も虎に殺されました」
それで、孔子が婦人に「どうしてこの地を離れないのか」と訊くと、婦人はこう答えた。
「この地には重税がないのです」
この諺が意味するところを私見で解釈すれば、重税国家から人は逃げ出すということだろう。
すでに、「重税ニッポン」に嫌気がさして、多くの富裕層や有能なビジネスマン、起業家たちが国を出ている。有為な若者たちも国を出ている。とくに本気でスタートアップを目指す若者は、海外を目指す。昔の若者は英語が苦手だったが、いまの若者はそうではない。また、ITテクノロジーを使えば、語学の壁は乗り越えられる。
シンガポールなどのタックスヘイブンは、日本のような官僚統制国家では「悪」とされている。しかし、本当は、重税国家の理不尽な徴税から逃れるための「自由な地」とも言える。
このまま日本が重税国家路線を突き進めば、タックスヘイブンばかりか、能力を認められる国、高い収入が得られる国に、多くの国民が国を出ていくだろう。
とくに、将来に希望が持てなくなった若者たちが、本気でこの国を出たら、日本はどうなるのだろうか。
山田 順
ジャーナリスト・作家
※本記事は『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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