「確かに日本の税負担は重いが、世界的にみるとそれほどでもない」…税率だけ見れば確かにそうですが、重税に見合った手厚い福祉サービスが受けられる北欧などと違い、日本では教育資金の費用をはじめ、さまざまな費用が自己負担となっているなど、実際には「重税国家」の道をひた走っています。増税や年金改悪でこれから日本はどうなっていくのか、山田順氏の書籍『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)より、抜粋してご紹介します。

増税に加え年金改悪で国民生活を破壊

岸田政権になってから、「防衛費倍増」「子ども予算倍増」など、「倍増」のオンパレードになった。どれも、緊縮を行わないなら、国債発行か増税するほか手がない。

 

すでに、防衛費倍増問題では、復興特別所得税の延長や、所得税、たばこ税、法人税などで1兆円を増税する方針が決められた。これは、2024年度から段階的に実施される。

 

それとともに、〝隠れ増税〟も進んでいる。健康保険料と介護保険料の引き上げ、年金加入期間の延長と支給年齢の引き上げなどだ。

 

国民健康保険料は2022年4月に上限額が3万円引き上げられたばかりだが、2023年4月からさらに2万円引き上げられた。年金のほうは、2024年に控えた5年に1度の年金財政検証に合わせて、数々の増額メニューが検討されている。

 

まずは、国民年金の加入期間を40年から45年に延ばす。年齢で言うと現在の60歳から65歳に引き上げる。保険料を5年間長く払わせるためだ。

 

そして、厚生年金の被保険者期間を「70歳まで」から「75歳まで」に延ばす。さらに、厚生年金のマクロ経済スライド期間を2033年度まで延長する。

 

こうした〝年金改悪〟のなかで、年金受給の高齢者にもっとも過酷なのは、マクロ経済スライドの延長だ。もともと年金制度は、物価や賃金が上昇すると年金もいっしょに上昇することになっていた。だから、インフレが起きても年金が実質的に減ることはなかった。

 

しかし、マクロ経済スライドによって、物価が上がっても年金の増額は抑制され、実質的には目減りするようになった。マクロ経済スライドは、本来なら2025年度に終了する予定だったのを10年弱も延長するのだ。

 

これが実現すると、月額約2万円の減額、20年間で400万円超の大幅カットになる。総務省の家計調査では、年金暮らしの夫婦2人世帯の支出は月額約27万円となっているので、高齢者世帯の暮らしはたちまち行き詰まる。

 

「老後2,000万円必要」と言われてきたが、2,000万円でも足りなくなる。

税金の支払い手がいなくなる未来

2022年に生まれた赤ちゃんの数(出生数)が、前年比5.1%減の79万9,728人で、1899年の統計開始後初めて80万人を下回ったことが、各方面に衝撃を与えた。

 

2023年も減少は止まらず、出生数は75万8631人で8年連続の減少となり、過去最低だった2022年から4万1097人も減少した。

 

この少子化のペースは、政府機関の推計より10年ほど早い。この傾向が続けば、年金をはじめとする社会保障制度や国家財政は予想以上に逼迫する。

 

こうなると、生産年齢人口も加速度的に減少する。それは、税金を払う納税者が加速度的に減少することを意味する。[図表1]は、1950年を起点とした日本の人口の推移で、2022年より先は推計だが、この推計はいまや成り立たなくなった。推計より速いスピードで少子化が進んでいるからだ。

 

このグラフを眺めて、日本の将来を想像すると、絶望的になる。

 

出典:財務省
[図表1]日本の人口の推移(1950〜2060) 出典:財務省
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※本連載は、山田順氏の書籍『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)より一部を抜粋・再編集したものです。

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