将来的には「学士」という資格も無価値になる
まず日本に少子高齢社会が到来したこと。2023年のデータで、日本人の出生数は前年より約4万人減少して約72万人(マイナス約5.5%)となりました。これは過去最大の減少数とされています。高度経済成長期のベビーブームと比べると絶望的に思えるほど出生数の減少が続いています。
その結果どうなったかというと、大学が余りはじめました。つまり、学校をえり好みさえしなければ、「大学全入時代」になっているのです。少々厳しい言い方かもしれませんが、これからは「学士」という資格自体に価値がなくなってしまうでしょう。
その昔、大学進学率30%台という時代がありましたが、現状は60%台後半の数字になっています。50%台後半から60%台なかばくらいの数字を考えると、経済的な理由で進学を断念している学生は一定数いるものの、入試のマインドとしては、ほぼ全入状態といってよいと思います。
そして最も大きな問題だと思うのは、企業の動向と鋭く結びついている事象かもしれませんが、日本が格差社会になりはじめていることです。
残念ながら「生まれながらの家庭の経済力」が一生を左右してしまうような、教育格差を生み出す社会になりつつあります。裕福な家庭に生まれて潤沢な教育予算のもとでレベルの高い教育を受けられる子どもと、そうした恩恵に預かることができない子どもの間に大きな差ができてしまいます。
いろいろな社会情勢の変化で学校の教育現場も疲弊していますし、常識ではコミュニケーションが取れないような親御さんも増えてきているようです。そして、現在はいつの間にか中学受験が進学の前提になっています。地元の小学校からそのまま公立中学校へ進学させるのは、心もとないということでしょうか。
こうした時代背景が、以前とは違った受験戦争を誘発させています。かつては終身雇用の慣習が残る時代でしたから、よい会社に入って大過なく人生を送ることが目的となる受験戦争でした。生涯で最善の結果を得るために逆算して「よい会社に入るためには、よい学校に入らねばならない」ということになったわけです。
それが今では、よくない環境の教育現場に入ると子どもの成長に悪影響が及ぶので、そこから避難するかのように私学を受験するという風潮になっています。このように以前の受験戦争といまの受験戦争では、様相が違うことに注目しなければならないでしょう。