春闘も大詰めとなり、昨年から続く空前の賃上げにより、新卒の初任給などが引き続き上昇する傾向が明らかになりました。新卒従業員に高い給与を支払うことは、人材市場や日本の企業全体にとってプラスに働くと、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニアである東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)の代表取締役社長、福留拓人氏は述べています。今回は、新卒の給与上昇がもたらす人材市場への変化について、福留氏が詳しく解説します。
新卒の初任給は今年も上昇へ…「氷河期世代はどうする」の声もあるが、若者の賃上げを推進すべき理由【人材のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

上昇する新卒の給与と就職氷河期世代の給与、どうバランスをとるのか

春闘の季節になりました。昨年(2024年)は空前の賃上げ・ベースアップが各方面で叫ばれ、企業がそれを受け入れる様子が大々的に報道されていました。

 

そして今年(2025年)もその流れはまったく変わらずに続いているようです。新卒の初任給はもちろんのこと、初年度に大きな実績を挙げた新入社員の賞与の最高支給額が大幅に引き上げられる傾向にあります。大手企業の具体的な社名とともに、そのような話題が頻繁に経済ニュースで取り上げられています。

 

そうした中で注目を集めているのが、就職氷河期世代です。この世代は評価制度もさることながら、採用時点で非常に厳しい状況に置かれていました。氷河期世代の賃金テーブルと新卒の待遇についてどのように折り合いをつけるのか、その考察がなされた記事も多く見かけるようになりました。

 

果たしてこの問題は、共存させてバランスを取ることができるのでしょうか。HR(人的資源)のコンサルティングに関わる立場として、私はかつて中国の政治家が言った「先に豊かになれる者は先に豊かになれ」という言葉を思い浮かべます。

 

企業でも、実績を挙げられるところ、つまり新卒から先行して一気に押し切ってしまってかまわないのではないでしょうか。すべての人を等しく満足させる緻密な人事評価制度というのは、古今東西どこの企業でも完成したことがありません。どんなに素晴らしい会社の評価制度も、数年で矛盾と経年劣化、ほころびを見せるものです。

 

だからこそ、常にメンテナンスが必要なのです。一種の社会主義的、あるいはリベラルすぎる発想での評価制度設計は推進力を失い、完成しないままで終わってしまいます。

 

もともと、大手企業では莫大な内部留保が蓄積されており、それを何かに有効活用することへのプレッシャーが少ない時代がありました。一方で、将来に向けて萎縮し、できるだけお金を溜め込んでおきたいという心理が醸成される環境もあったことは否めません。

 

現在、日本の大企業の一部は潤沢にお金を回し続けており、その企業においては従業員の賃金を上げていくことはさほど難しくない状況下にあります。