企業が求人票に「大学名」を記入し始めているという現実
結論としては、「一流大学に入っている学生は高い学力を保持している」という評価ではなく、家庭環境から推察して「人間性が偏っているリスクが低いであろう」という評価をされることになります。そのため、企業が大学を固有名詞で指定してフィルターを掛けてくる傾向が急速に強くなっているのです。
大学の名称などは、一般的には就職差別を誘発する要素ですから、求人票などには絶対に書いてはならない事項なのですが、残念ながら筆者の経営するエージェントには、「東大早慶一橋まで」とか「旧帝大以上に限る」とか「日東駒専はNG」といった、公言できない言葉がそのまま通達されることが多くなってきました。
残念なことですが現実はそこまで来ています。
学力について、昔こういう笑い話がありました。学歴差別はよくないのでエントリーシートに大学名を書かせずに入社試験を実施したところ、フタを開けてみると合格したのは一流大学の学生だけだったということです。基礎学力の測定を重視した試験を課せばもちろんそうなるわけですが、最近はそういう点をあまり重視しません。
入社試験で基礎学力を測るようなことはあまり行われなくなりましたが、先に述べたように人間性のリスクを回避する動きを学歴に頼っているところが増えているようです。
たとえば新卒で入社して半日で電撃退職してしまうとか、ある日突然出社しなくなるとか、退職手続きに親が現れるとか、家族や友人が会社に乗り込んでくるとか、ひと昔前の常識では考えられないようなことが起きているからです。
やや性急で浅はかな見解かもしれませんが、企業は「学力を以て一流大学に入った」というよりは「本人を介して親を見よう」としている面があります。
この大学なら精神疾患やモンスターペアレンツ的な動きをするような確率が低いであろうということで、そこを学歴に関連づけているわけです。非常によろしくない傾向だと思うのですが、我が国のいろいろな部分での凋落を表している現象だといえるのではないでしょうか。